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宮崎駿監督の新作スタッフの募集に見るリアリティー [独り言]


宮崎駿監督の新作スタッフの募集が公開された。以下の通りだ。


宮崎駿 新作長編アニメーション映画制作のためのスタッフ(新人)募集
http://www.ghibli.jp/info/011243/



実はこの応募、新人の育成を兼ねたもののようだ。
研修期間〔6ヶ月〕を経て、一定のレベルに達した後に制作に加わっていただく、
新人育成を前提としております)と書いてある。
百歩譲って新入社員と考えれば、社会保険完備もあり、賃金設定は最低限度かな・・という気が
しないでもない。
多分まともな残業代は出ないだろう。時節柄それでいいかどうかは別にして。
追い込み時期は、徹夜が当たり前の業界だからだ。
それでも3年の期間限定雇用である点は悩ましい。
この映画に参加した事で、クリエイターたちのキャリアがアップして、
その次の仕事や人生設計に役立つのなら良いのかもしれないが、
狭いアニメーション業界で、契約社員ような非正規雇用の状態で
1プロジェクトに関わるだけでは、それも余り期待できない。


そう考えると、この条件に向いているのは、20歳代前半で、
宮崎監督と死に程仕事がしたくて、彼の映画に関わりたくて仕方ない、
という純粋な情熱を持った人が良いだろうと思う。
少なくとも普段得られない経験を積むことが出来、想い出にもなる。

3年の間に怒鳴られるだろうが、それもいい経験だ。
収入が多少低くても得られる経験は先々何かの役に立つだろう。
そういう意味では、キャリアアップを目論む人には全く向いていないかもしれない。

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井上陽水 Good Luckツアー 昭和女子大学 人見記念講堂(2017年5月11日) [ライブ・コンサート]

井上陽水 Good Luckツアー 昭和女子大学 人見記念講堂(2017年5月11日)



開場が10分遅れたが、開演は10分遅れた程度だった。
見事に満席。
人見記念講堂で陽水さんを観るのは(確か)2回目だ。
客層は男女半々、主は50代以上。
流石に若い人はいなかったな・・。若くても40代程度だろうか。
2016年はオーチャードホールだったが、陽水さんクラスでも、会場確保に苦労してここしか取れなかったのだろう。


そう、昨今、都内の2000名キャパの会場がなかなか取れないため、人見記念講堂でも大物系がライブをするようになったが、ここは彼らにはちょっと気の毒な場所だとは思う。ひと昔前だったらここは選ばれ難い場所だった。
まず、ステージの奥行がないのと、会場内の壁がタイルなので残響が多く、音の締りが作りにくいからだ。
ステージの奥行がない事で、ドラムスとボーカル(観客)の距離が近くなるため、
客席に漏れる生音の量が普通に増して多く、バンド全体の音のバランスが取りにくい。
そのため、最近の陽水さんのようなウイスパーを多用し、囁くような歌い方をするような曲だと
残響やリズム隊の音で歌詞や声のニュアンスがバンドの音に埋もれる傾向があり、
ちょっとボーカルが聴きにくいという難点があるのだ。
やはり彼の深みのある声を中心に聴きたい私としては、残念な部分だった。
また陽水さんが歌唱中にボーカルマイクに対して流動的な距離を取って歌うために、
バンド内での歌唱時は、音の強弱が大きくなるように聞こえるという点もあった。
実際、アコースティックセクションでは非常にボーカルが明瞭だったが、バンドになると
多くの場合、どうしても陽水さんの声を「探しに行く」感じになってしまう部分があった。
そういう意味で、残念ながら人見記念講堂は余り好きな会場ではない。
どうもPAの腕の問題だけで解決しないのかもしれない・・・。


この日は映像収録が入っていたので、(多分12日も入っているのだろう)、17年秋のツアー頃には
DVD化されるのだろうと思う。
会場の音響はともかく、演奏は素晴らしく、ご本人は当然なのだが、特にベースの美久月千晴氏のパンクな演奏は、双眼鏡越しで見ていてもちょっと感動する位だった。

他の人は余り注目しない分野かもしれないが、ちょっと普通のアプローチではないがさりげなくて素敵で相当パンクなフレーズを連発しており、聴きモノだった。今後も彼の演奏には目を離せない。

また、キーボードの小島良喜(この方は元KUWATA BANDのメンバー)も気の利いたアドリブをチョイチョイ聞かせてくれていた。
もちろんドラムスの山木氏やギターの長田氏、今堀氏、コーラスのKynnさんたちもいつもと変わらずの高度に安定した演奏を聴かせてくれていたのは、最後のメンバーへの拍手の大きさを聴いても分かるものだった。



メンバー:
長田進/G
今堀恒雄/G
美久月千晴/Ba
山木秀夫/Dr
小島良喜/KEY
Kynn/Cho
****/Cho(名前知りたい)



2019年にはアンドレカンドレでのデビューから数えて50周年になる陽水さん。
考えてみれば凄いキャリアだ。68歳でまだツアーしてホールを満員にしているんだから・・。
双眼鏡越しに彼の姿を見ながら、自分が中学高校生時代、彼にどれほど憧れていたかを
改めて思い起こしながら演奏を堪能した。あれから長い時間が経過したが、その彼はまだ現役のステージにいた。
彼に憧れに色々な夢を見ていた中高生時代、毎日勉強部屋でフォークギターを抱えて演奏していた数々の曲をこの夜演奏してくれたのだが、私には涙ものの選曲の数々の感想は、ツアーも終了したので以下に追記致します。

ここ数年、陽水さんのライブに来るようになり、昔と違う点はMCの多さだろう。少なくとも昔の陽水さんは殆どMCをしなかった。だからここ数年気の利いたMCを聞いていると、陽水さんってこんなに話の面白い人だったんだ!?という感動がある。 前回のツアーでイタリア系の高い洋服店でシャツを買った際、ジャケットを勧められた時のエピソードはDVD化されたライブ映像の特典にもなっているくらい面白い話なのだが、ここ数年の陽水さんのMCは本当に奇妙に面白い。

さてライブの方だが、ここ数年前半部の曲は80年代からのナンバーが多い。その後70年代なんかを取り交ぜてくるのだが、今回は「ゼンマイじかけのカブト虫」を演奏してくれたのが私にとってはとても心に沁みた時間だった。この曲が好きだった当時は高校生くらいだったが、そこはかとなく切ないメロディーと歌詞にいたく魅かれて毎日家で演奏していたものだ。かなり後年になってからこの曲がビートルズの解散をモチーフにしたことを知り、歌詞の中身を理解するに至ったのだが、ライブで聴いたのはこれが初めてだったので、曲を聴きながら実家の自室の当時の光景が脳裏に浮かんでは消えた。また「限りない欲望」も同様に好きな曲で、こうした古い曲群は、本当に私の青春のページを紐解いてくれた。

さて、実は、「Good Luckツアー」ってタイトルにひっかかっております。
おいおい、まさか・・・、Good Luckなツアーじゃないよね・・って。
陽水さんのことだから「Good Luckツアー」はシャレだと思うのだが、陽水さん、シャレでお願い致しますね。


5月11日のセットリスト:
1 この頃、妙だ
2 Pi Po Pa
3 フィクション
4 青空、ひとりきり
5 Tokyo
6 移動電話
7 5月の別れ
8 自然に飾られて
9 ワインレッドの心
10 女神
11 瞬き
12 ゼンマイじかけのカブト虫
13 心もよう
14 Just Fit
15 リバーサイド ホテル
16 つめたい部屋の世界地図
17 限りない欲望
18 氷の世界
19 勝者としてのペガサス


アンコール
20 アジアの純真
21 夢の中へ
22 夏の終りのハーモニー





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エンタメ業界の残業代と業界の課題 [独り言]

エンタメ業界の残業代と業界の課題



エイベックスが17年度に過去の残業代を計上して支払うという報道があった。




総額10億円で対象は1500名。一人当たり平均で約66万円相当だ。
残業代は現行法では、2年前までしか請求権がない。
それでもあの会社の業務体系で平均で1人当り約66万円というのはちょっと低い感じがするが・・・。
1時間2,000円としても333時間。月に60時間超え残業なんて当たり前の業界で、5カ月分程度はねえ・・。
払う対応に賞賛もあるようだが、やっていることは普通にやるべき事なので、賞賛には当たらない。


電通の無制限とも言える残業で亡くなった新卒者の自殺の影響もあったのだろう、
上場企業として雇用環境を遵守するのは業界の特殊事情が関係ない時代となった。
もはや特殊業界と言われ続けて来たエンタメ業界と言っても例外扱いしてもらえないだろう。


エイベックスの松浦社長は、エンタメ業界で働く人間は、仕事とプライベートの境なんて
ないんだ・・というような趣旨を発言し、炎上してしまった。
それでも多くの業界人で彼の趣旨そのものには同感した人は多いはずだ。


確かにエンタメ業界で働く人間は、仕事と趣味の境がなくて好きでやっている人間が多いのは事実だろう。

昨今では、ゲーム業界がそれを継いでいると言われている。
逆にそれを誇りにして働いている人たちもいることはいるし、金よりもやりがいだと言う人だって多いだろう。
経営者にすればありがたい存在だ。
しかし、自分の経験を踏まえてみると、そういう従業員の自発的な労働に胡坐をかいて
ビジネスしているエンタメ業界各社の経営は、結局のところ典型的な「搾取業界」だと言い切れる。
おまけに儲かった時に潤うのは、従業員ではなく、殆どの場合、経営側(企業)とタレント(アーティスト)なのだ。


従業員が自分の意思で好きで勝手にやっているのだから法規定の対価を無視して良いと言う訳ではない。
また、松浦社長は経営者であって従業員ではない。経営者にはタイムカードはないが従業員にはある。
こういう立場と事実を踏まえないまま、仕事とプライベートの境なんてないんだ・・という発言は、
経営者としてはちょっといただけなかったと思う。だからこそ炎上したのだろう。
裁量労働制に移行するとも聞くが、これが労働者側に不利になるのは目に見えている。


一般の人にはピンと来ないだろうが、エンタメ業界の従業員の給料は、平均的に見ても低賃金業界だ。
エンタメ系上場企業の給与を他の上場企業と比較しても、6~7割程度だ。

ミュージックマンネットというサイトにある、業界の募集記事を見ていると、殆どが新入社員に毛が生えた程度の給与だ。
http://www.musicman-net.com/

また、個人事務所になると多少の濃淡はあるが福利厚生までを加味するとかなりお寒い状況だ。
例外は、レコードメーカー位で、彼らの親会社は通常一部上場企業であり、親会社に準じた給与体系であるため、
一般的なエンタメ業界の給与体系とは異なる場合が多い。
従って現在でもレコード会社は斜陽産業である割にはかなり給与が高いと言えるかもしれない。
(もちろんレコード会社でも濃淡はある)


エンタメ業界でアーティスト以外で一般的な収入を大きく超えるには、大手事務所の管理職になるか、役員になるか、独立事務所を構えてタレント(アーティスト)を売るしかない。
そういう意味で、成功すれば普通のサラリーマンを大きく超えられるし、そうでなければ全然超えられない、もしくは普通のサラリーマンがセレブに見えるくらいという業界なのだ。


エンタメ業界のダイナミズムは特殊だ。
その特殊さ故に、彼の業界人の多くは魔法がかかり、魔法にかかったまま働ている人間がかなり多い。


その業界にも懸念点がある。
元々エンタメ業界は、ビジネスモデル的に業務効率の悪い業界だ。
アーティスト、タレントは人間だし、普通でも手間暇かかる相手だ。優秀なアーティスト、タレントほど扱いにくいとも言える。
また、映像関係なんて想像を絶する手間暇の集積であり、音楽制作、ライブ活動作等も同様だ。
加えて、手間暇かかる割に成果が出る確率が高くないし、成果が出るまでにかなり時間もかかる。
もちろん当たれば過去の負債を吹き飛ばし、大きな成功を収められるが、そういう人は万に1人って確率だ。
そうなると普通経営者が考えるのは固定費、特に人件費の抑制なのだ。
人件費を残業代を含め法定通りに支払っていると原価が上がり経営を直撃する。
従ってエンタメ業界にとって残業代を法定通り支払うという行為は、経営そのものを否定しかねない部分があるのだ。


私が前述した「搾取業界」という表現の根本的な部分はここにある。
つまり、エンタメ業界は、好きな連中が自発的に勝手に働いてくれて、給料はそこそこでもたまにちょっとメシでも食わせておけば文句を言わないような環境下でないと成立しない部分が多いという事だ。
業界的な「役得」もない訳ではないので、搾取だと思っていないで働いている人は多いだろう。
また、自分の労働行為1つ1つに一々対価を求めない風潮だって普通に慣習として残っている。
しかし、それは業界内に通用する話で、一般論的には搾取もしくは搾取に近い状態と言って良い。
それでも自発的であればまだ救われる部分はあるが、後で考えると寂寥感に襲われる人も多いのではないだろうか?


いずれにしても、特にエンタメ業界の上場企業系にとって残業代は経営上、かなりのリスクとなるだろう。
朝までやるようなレコーディングにスタッフが永遠と付き添っていても、ビジネス的に生み出すものが多くなければ
残業代を払いたくないのは当然だが、だからと言ってミュージシャンを放置しておくわけにもいかない。
実際私の知り合いのレコーディングエンジニアも、管理職として残業に取り組まざるを得ない時代に苦悩している。特にミュージシャンのような仕事は時間に縛られない。しかし多くの業界人はいわゆるサラリーマンとして働いており、時間管理が必要だ。ミュージシャンの要求を満たす義務のあるサラリーマンというのは実際問題として落としどころが難しいのだ。
ミュージシャンやタレントたちは、子飼いのスタッフが自分の仕事場からいなくなるのを嫌う傾向がある。スタッフにとってはお守りに等しいが、彼らの機嫌取りも大事な仕事の1つなのだ。
ミュージシャンやタレントの付き合いで朝まで飲み会に付き合っても、それが即お金を生む訳でもない。タレント、代理店、放送局の連中と飲むのが仕事なんて言われているが、まさにそういう部分は実在するし、そういう部分で培った人脈が仕事の源泉とも言える。
ミュージシャンやタレントからすれば、「無駄の集積」こそが、タレント性を発揮する源泉とも考えているだろうからだ。
かようにエンタメ業界は、業務に無駄が多く見えるが、逆説的にはそれが新たなクリエイティブを生む根源なのだとも言える。しかし昨今の音楽業界を見ているとそれも怪しい。
時代が変わってしまい、無駄の集積が金の卵を産まず、本当に無駄の集積になりそうなのだ。考えてみれば当然で、これまで10人のうち、1人が大ヒットし、2人が中ヒットすればビジネスの辻褄を合わせられたが、大ヒットも中ヒットも出ない時代ではビジネスをしようがない。売れるヤツは売れるが売れないヤツは売れないだけということだ。でもその売れるヤツをこれまでのように投資して見つける事が音楽業界では出来なくなっているということだ。
ユニバーサルの新しい社長と言われる人物が、これからは東京ドームや紅白に出れるようなヤツしかウチではやらないと言ったそうだが、その良い結果論を始まる前に的確に見つけられるのなら、音楽業界は苦労しないのである。

エイベックスの残業代支払いは、そういうエンタメ産業の抱えるビジネス的な矛盾にかなり大きな課題を突き付けた問題と言えよう。同業者の今後の対応が見ものである。





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