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フジ決算報告に見える放送業界の悩ましさ [独り言]

2017年度のフジテレビの決算が発表された。



経営陣のコメント要約では、今期売上は前期比マイナス7・1%の2606億7700万円も営業利益は11・3%アップの44億8300万円、経常利益は同6・4%アップの48億2900万円と共に増益。減収も同局としては6年ぶりの増益となった。

会見に出席した奥野木順二・執行役員財経局長は今期増益の理由について、「現場の経費見直し、特に番組制作費を前期882億から806億まで76億円落としたことが大きかったと思います」と回答。


端的には「減収増益」。増益理由は「制作費のカット」。

放送単体での営業利益率は1.9%。



フジ、6年ぶり増益!番組制作費見直しが効いた…決算報告会見




普通の経営感覚からすれば、放送って意外に儲からない仕事なんだな・・っていうことだ。
フジの決算を見て歴然としているのは、ホールディングスとしてのビジネスは、不動産部門が支えているという点だ。不動産部門は昨年比で+30%の営業利益増だ。
またホールディングス全体で見れば、本体よりも子会社の利益に依存しており、営業利益の80%を子会社が叩き出している。


またフジだけではなく地上波の放送ビジネスは利益率が低い。
経営的な観点で言えば、余り積極的に手を出したくないビジネスだ。
1年間で40億円程度の営業利益を出すだけなら他にも効率的な方法があるからだ。

正直言えば、フジの半分以下の売上で、20倍近い営利を稼いでいる業態も存在する。
おまけに人件費はフジの半分程度だ。
そういう観点で見ると、フジテレビは1人単位当たりの効率がものすごく悪いという事になるが、これはフジだけでなく地上放送系は軒並み同じだ。
ちなみにフジ系の放送事業に関わる人材(社員)は30代で年収1千万円を優に超える。50代では2000万円代がざらにいる組織だが、営業利益率や貢献度を鑑みると、明らかに高すぎるだろう。ビジネス規模だけで言えば、現在の半分程度の年収で十分と言える。
特に不動産部門で働く人たちは、自分たちの方が貢献度が高いのに放送関係より年収が低い事に不満があるに違いない。
時代的にもビジネス的にも放送で働く事が特別な時代ではなく、この辺りの放送系の人件費配分に手を付けないとこの先放送事業はますます立ち行かない時代になるのだろう。しかし人件費を下げれば人が集まらず結果的に質を落とすリスクもあり悩ましい。

地上波系の人件費は成果に対して異常に高すぎるという点と、コストコントロール以外で利益を産めない構造になっており、経営的にアップサイド(売上高を上げる施策)を狙えるウインドーがほとんどないと言える。

昨今安倍政権は、電波オークションを実施しようとしているが、地上波のニュースでこれが取り上げられないのは、彼らとして大反対だからだが、現在の放送局が支払っている数億円程度の波料がオークションで10倍程度になると言われており、そうなれば営業利益が丸ごと吹っ飛ぶ可能性があり経営に大きな打撃になるのが分かっているので反対という訳だ。

さて、フジだけではないが、売上が下がるためにコスト(制作費)を下げる経営手法には本来未来がない。売上を見込めるように改善するか、周辺事業を立ち上げる必要があるからだ。
特に編成費用はコンテンツの質に直結し、ある限界以下になればもはや地上波の質を保てなくなる。
放送コンテンツが一定の質を保てるのは、多数の視聴を根拠にした広告費用である。視聴率が下がれば広告費が下がり、編成費用も下がるという負のスパイラルに入る。

現在の地上波放送局は既にその悪循環に入っていると言ってもいいだろう。

新聞業界も同じような状況で、実質部数に比べて人件費等が高すぎて利益を産めない構造になっている。また新聞作業に従事する人たちは、ビジネス的側面で仕事をとらえておらず、社会的役割を理由にコストカットへの抵抗も多い。
フジだけではないが、地上波関係が、不動産屋がメインで放送もやっているようなビジネスモデルになりつつある現在、新聞をささえるために他の事業が貢献するような形はオールドメディアに共通した形態になりつつある。
オールドメディア苦境は、ネットを中心としたニューメディアへの移行の影響だが、ニューメディアも事業採算性では全く構造構築が出来ておらず今後の課題となっている。

正直言えば、日本の放送局数は今の半分以下でいいと思う。また新聞社の数も3つ程度で良く、現在の日本は無駄にメディアの数が多すぎる。
業界内での事業採算性が取れなくなると次に起こるのは再編だろう。
大抵のビジネスの場合、1業界で残るのは3つというのが相場だ。
放送局は免許事業であるため再編が難しいのだが、電波オークションが風穴を開けるかもしれない。
そうなれば再編への道が見えるだろう。
また新聞はいずれ再編の道を歩むだろう。

昨今電車で新聞を読んでいるサラリーマンを見かけなくなったが、もう新聞を読む時代は終わったと思っている。ネットから一次情報を得られる可能性もある時代に、フィルターの付いた記事を読むのは全くばかげている。トランプ大統領は、大統領広報を通さずに大きな決定や意見を出す初めての政治家になった。彼の言い方等は色々と物議があるが、メディアを通さない情報接触の利点は民衆にとって大きい。(同時にリスクもある)



オールドメディアに囲まれて仕事をしていると気が付きにくいが、一般民衆は様々なルートで情報を取れる時代になっている。
オールドメディアにが使わない人材からの方が圧倒的に質の高い情報にアクセスできること知る時代になり、65歳以上の人間はともかく、それ以下の層を以前のように民衆をコントロールできると考えない方がいいだろう。
実際、その動きは既に始まっている。



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「HIRED GUN」と呼ばれるミュージシャンたち [独り言]

HIRED GUNと呼ばれるミュージシャンたち


友人がネットフリックで視聴できる面白い音楽ドキュメンタリー映画を教えてくれて
見せてくれた。


タイトルは「HIRED GUN」。




「HIRED GUN」という言葉はこの映画で初めて知った。
意味は、「ミュージシャンが雇うミュージシャンたち」のことだ。
ソロにしろ、バンドにしろ、バックメンバーとして演奏する連中、
彼らを総称して「HIRED GUN」というらしい。


名も無きスタジオミュージシャンたちで最も有名なのは「Wrecking Crew」「Funk Brothers」と呼ばれた集団だったが、「HIRED GUN」は特定の一団ではなく、バックメンバーとして活躍する集団と言っていいだろう。




さてこの映画には数々の名もなきミュージシャンたちが登場する。
音楽通には名前を知る人物もいるが、大抵は一般には知られていない。
しかし彼らの演奏はライブやレコードに刻まれている。


彼らは中心メンバーであるボーカリストやバンドのサポート的存在で、決してメインではない。
特にこの映画で印象的なのはビリー・ジョエルとそのバンドメンバーたちの逸話だが、
ビリー・ジョエルからクビにされたメンバーたちの発言はかなり辛辣だ。


ある黒人プロデューサーの言葉が印象的だった。


「HIRED GUN」に必要な素養は3つ。


1、Aクラスの演奏ができる事。
2、雇っている主人の音楽の意図を素早く解釈すること。
3、カッコいいこと。


またある白人プロデューサーの言葉も印象的だった。
「1流以外は不要だ。2流のいる場所はない」



「HIRED GUN」はある意味でミュージシャンのメジャーリーガーともいる。
だが、彼らの扱われ方は決してメジャーリーガーとは言えない。


ビリー・ジョエルの元ドラムス担当だった人物は、移動の際のビリー専用の飛行機に
搭乗拒否されたとコメントしている。
現在では子供のドラムスクールなどで教えたり演奏したりする生活をしている彼の言葉には
華やかな時代を懐かしみ、戻りたいという感じが滲んでいた。


またあるバンドのギターリストは、週給500ドル(1980年代)だったと語り、
中心で活躍するミュージシャンとの格差の大きさを訴えていた。

また華やかな裏側でメインアクトとの歴然とした格差を訴えるミュージシャンもいた。
アメリカの音楽業界は全くもって弱肉強食世界だ。


ある「HIRED GUN」の1人だったギターリストは、先の展望に未来を見いだせず、
リスクを冒して全く名も無きメタルバンドのメンバーになる決意をした。
彼にとっては人生そのものを賭けるに等しい。


「HIRED GUN」の彼らが口々に言うのは、クラブで演奏して暮らすような生活は懲り懲りだという言葉だ、

ミュージシャンとして明らかにエリート層にいる彼らも、
その上にいるメインを張れるミュージシャンたちには叶わないのがこの世界のルールだ。


そのメインの人たちもいつまでもTOPに居られないかもしれないという不安と闘っている。


「HIRED GUN」。
日本にも同じような仕事をしている人たちは数多くいるのだが、
華やかな世界でトップにいられるのは僅かであることは日米とも同じだ。

ここ数年間で私が行ったコンサートで、長年に渡ってバックを務めたメンバーがあるツアーから交代したケースを2件目撃した。
1人は山下達郎さんで、30年近くコーラスをしていた佐々木久美さん、そして国分友里恵さんが2016年のツアーから交代した。達郎さんの場合、当然だが竹内まりあさんの場合においても同様の措置となる。
またもう一人はユーミンで、25年間という長期にわたって彼女のコーラスを務めた松岡奈緒美さんが交代した。

彼女の交代は、2017年12月初頭の彼女のブログにその趣旨を伝えたテキストが短く書き込んであった。
彼女らはいずれも長年ステージで活躍しており、ファンには知られた存在だった。
当事者ではないので理由は推測の域を出ないが、この3名とも年齢が50代後半であり、達郎さんやユーミンがパフォーマンスに対する再査定をしたのだろうとは思う。
プロの世界ではこういう事があるのは普通の事で、致し方ないのだが、交代されたメンバーたちは、複雑な心境だと察する。

それもこれもHIRED GUNの宿命と言える。

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