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「HIRED GUN」と呼ばれるミュージシャンたち [独り言]

HIRED GUNと呼ばれるミュージシャンたち


友人がネットフリックで視聴できる面白い音楽ドキュメンタリー映画を教えてくれて
見せてくれた。


タイトルは「HIRED GUN」。




「HIRED GUN」という言葉はこの映画で初めて知った。
意味は、「ミュージシャンが雇うミュージシャンたち」のことだ。
ソロにしろ、バンドにしろ、バックメンバーとして演奏する連中、
彼らを総称して「HIRED GUN」というらしい。


名も無きスタジオミュージシャンたちで最も有名なのは「Wrecking Crew」「Funk Brothers」と呼ばれた集団だったが、「HIRED GUN」は特定の一団ではなく、バックメンバーとして活躍する集団と言っていいだろう。




さてこの映画には数々の名もなきミュージシャンたちが登場する。
音楽通には名前を知る人物もいるが、大抵は一般には知られていない。
しかし彼らの演奏はライブやレコードに刻まれている。


彼らは中心メンバーであるボーカリストやバンドのサポート的存在で、決してメインではない。
特にこの映画で印象的なのはビリー・ジョエルとそのバンドメンバーたちの逸話だが、
ビリー・ジョエルからクビにされたメンバーたちの発言はかなり辛辣だ。


ある黒人プロデューサーの言葉が印象的だった。


「HIRED GUN」に必要な素養は3つ。


1、Aクラスの演奏ができる事。
2、雇っている主人の音楽の意図を素早く解釈すること。
3、カッコいいこと。


またある白人プロデューサーの言葉も印象的だった。
「1流以外は不要だ。2流のいる場所はない」



「HIRED GUN」はある意味でミュージシャンのメジャーリーガーともいる。
だが、彼らの扱われ方は決してメジャーリーガーとは言えない。


ビリー・ジョエルの元ドラムス担当だった人物は、移動の際のビリー専用の飛行機に
搭乗拒否されたとコメントしている。
現在では子供のドラムスクールなどで教えたり演奏したりする生活をしている彼の言葉には
華やかな時代を懐かしみ、戻りたいという感じが滲んでいた。


またあるバンドのギターリストは、週給500ドル(1980年代)だったと語り、
中心で活躍するミュージシャンとの格差の大きさを訴えていた。

また華やかな裏側でメインアクトとの歴然とした格差を訴えるミュージシャンもいた。
アメリカの音楽業界は全くもって弱肉強食世界だ。


ある「HIRED GUN」の1人だったギターリストは、先の展望に未来を見いだせず、
リスクを冒して全く名も無きメタルバンドのメンバーになる決意をした。
彼にとっては人生そのものを賭けるに等しい。


「HIRED GUN」の彼らが口々に言うのは、クラブで演奏して暮らすような生活は懲り懲りだという言葉だ、

ミュージシャンとして明らかにエリート層にいる彼らも、
その上にいるメインを張れるミュージシャンたちには叶わないのがこの世界のルールだ。


そのメインの人たちもいつまでもTOPに居られないかもしれないという不安と闘っている。


「HIRED GUN」。
日本にも同じような仕事をしている人たちは数多くいるのだが、
華やかな世界でトップにいられるのは僅かであることは日米とも同じだ。

ここ数年間で私が行ったコンサートで、長年に渡ってバックを務めたメンバーがあるツアーから交代したケースを2件目撃した。
1人は山下達郎さんで、30年近くコーラスをしていた佐々木久美さん、そして国分友里恵さんが2016年のツアーから交代した。達郎さんの場合、当然だが竹内まりあさんの場合においても同様の措置となる。
またもう一人はユーミンで、25年間という長期にわたって彼女のコーラスを務めた松岡奈緒美さんが交代した。

彼女の交代は、2017年12月初頭の彼女のブログにその趣旨を伝えたテキストが短く書き込んであった。
彼女らはいずれも長年ステージで活躍しており、ファンには知られた存在だった。
当事者ではないので理由は推測の域を出ないが、この3名とも年齢が50代後半であり、達郎さんやユーミンがパフォーマンスに対する再査定をしたのだろうとは思う。
プロの世界ではこういう事があるのは普通の事で、致し方ないのだが、交代されたメンバーたちは、複雑な心境だと察する。

それもこれもHIRED GUNの宿命と言える。

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