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ミュージシャンという生き方 [独り言]


中学高校時代、ミュージシャンは私の憧れの職業だった。
一時期私はミュージシャンを仕事にすることを目指して生きていた。
音楽業界で働く事に憧れを持っていたのはミュージシャンへの憧れと同等だった。

それから45年近くが過ぎ、ミュージシャンという職業を傍から俯瞰していると、
これほど過酷で生き残りが難しい職業であったろうか?と感じている。


正確ではないが、少なくとも70歳を超えて一線と言える場所で活躍しているミュージシャン(ソロ、もしくはグループ)は、加山雄三氏、吉田拓郎氏、小田和正氏、細野晴臣氏と言い切っていいだろう。
寺内タケシ氏も含んでいいかもしれない。
活動の幅はそれぞれ違うが、少なくとも彼らは1500~2000名以上のホール級を満員にし、ツアーをし、メディア露出等も定期的にある。

その下の年代になると矢沢永吉氏、井上陽水氏、さだまさし氏、山下達郎氏、森山良子氏、谷村新司氏、
南こうせつ氏、高橋真梨子氏、坂本龍一氏、中島みゆき氏、浜田省吾氏、桑田佳祐氏、
松任谷由実氏、THE ALFEE、矢野顕子氏、長渕剛氏、竹内まりあ氏、鈴木雅之氏、八神純子氏辺りが
妥当な線だろう。私の無知で漏れている人もいるかもしれないが概ね正しい範疇だと思う。
ちなみに演歌、歌謡界は除いてある。 

数えてみれば分かるが、全部で30組は存在しない。多少範囲を広げても50~100組程度だろう。
彼らはロック・ポピュラーミュージック界のエリート集団と言っていい。


60年代~80年代前半にデビューし、キャリアを30~40年近く続け、現在でも一線でやれているフロントラインのミュージシャンはこの数程度しか存在しないという証だ。
小田和正氏に至っては70歳になってもアリーナ級を満員にしており、少なくとも彼と同じ年齢では最高動員数だ。
昭和22年生まれの彼の同年代出生数は、2,678,792人とある。
つまり、彼のようなミュージシャンの出現する確率は約260万分の1ということだ。
細野、吉田、小田氏の3名の出現確率は、90万分の1程度ということになる。
また60歳~69歳の出生数は約2,000万人強だが、上記を見て明らかなように
一線で生き残ったミュージシャン数は20組程度。つまり100万人に1組という感じだ。
だから概ねこのレベルの才能をもち持続性があるミュージシャンの出現する確率は50~100万人に1名と言っていいだろう。

凄い数字じゃないか・・。普通じゃない。



さて、先ごろ小室哲哉氏の不倫報道が週刊誌上に踊った。
著作権詐欺事件以降、小室氏の活動は火が消えたようだ。
90年代のブームの大爆発を知っている年代からすれば、今日の彼の活動状態は信じられないだろう。
小室氏は本件に絡んで引退を表明したが、YMOに憧れた彼がYMOの次の世代を担った第一人者だったことが疑いようがない。
(ちなみに個人的にはたかだか個人の不倫報道に絡む引退表明は唐突感が隠せない。別に引退しなくても良いと思うのだが、KEIKOさんへの贖罪を自分の職業を棄てる事で表したかったのかもしれないし、彼自身の体調の件もあったのだろう。還暦になる彼が自分の引退を会社員の定年退職になぞらえた発言があったが、彼の会見を見ていて往時を知る世代としては、輝きを失い弱った老人のようにも映る会見の姿は寂しいものだと思った。夢を与える側の仕事の只中にいる人物の現実的な課題を表に現した点で異例ともいえる会計だったが、彼に限らず私生活の問題や本人の体力、気力の減少は彼なりにあったようだし、それは我々と同じということなのだろう。)


2018年には還暦になり日本の音楽史にその名を刻んだキャリアを持っているような才能が、
先述したようなミュージシャンたちのように活躍を持続出来なかったのは何故なのだろうか?と訝る。

才能の違いと言えば簡単だが、彼が人並み外れた才能を持っている点において、過去の履歴から否定出来るはずもない。
しかし持続性が無かった点では上記の先輩たちと比較しても陰が薄くなる。
彼が尊敬する坂本龍一氏は、特にYMO後ソロでも成功し、その後映画音楽の分野でアカデミー賞を受賞するなどのキャリアを構築し、現在でも一線にいる。

坂本氏やそれに類するミュージシャンに備わっていて小室氏に無かったものは何だったんだろうか?


それを紐解く材料は小室氏の著作権に絡む詐欺事件にあるだろうと思う。


生き残っている大物ミュージシャンたちは、一見才能だけでやり続けているようにも思うだろうが、
実際はそうではない。彼らは常に自分の才能以外の見識や能力を総動員して戦っているし鍛錬もしている。

こうした事を否定するミュージシャンもいるだろうが、才能だけで生き残れるほどこの世界は簡単ではない。天からもらった才だけを使い、空から降ってくる音楽を捕まえるだけでは生き残れないという意味だ。

彼らの活動が無意識だけで継続できるはずもなく、我々同様に「頭で考え」「感性を磨き」「研究をし」「意識的に成果を作り出し」「分析し」自分の居場所の維持や新しい才能の出現と絶えず戦っている。

ミュージシャンと言えばチャラチャラした気楽な印象だけがあるかもしれないが、
職業として数十年を生き残ろうと思ったら実際はそういう訳に行かない。

相当にタフだし、相当にエネルギーがいる。成功している彼らは並外れているためそれが出来るのだ。
それでも60歳を過ぎれば歌手の場合、いつ歌えなくなるか・・という恐怖との闘いもある。また当然だが引退や残り時間とのせめぎ合いもある。これは誰もが同じだが、その場凌ぎでは出来ない事だ。


小室氏には厳しい言い方になるが、著作権に絡む詐欺事件の背景には、小室氏が過去の栄光を梃にして、
ピーク時の贅沢三昧な生活を維持するための身の丈以上の金を得ようとしたのかもしれないし、本分とはかけ離れたものに首を突っ込んでしまい、本来彼がプロのミュージシャンとしてやるべき仕事の源泉を蔑ろにし、地道にやって来なかったかもしれないと推察する。
また周囲に彼の行動ややり方をキチンと質すミュージシャンやスタッフにも恵まれなかったのだろう。耳の痛い事を言う人は遠ざけたくなるのが人情だが、時にはそれを受け止める器が人生を決定することもある。

少なくともこの時点での彼の躓きはキャリアを大きく棄損してしまったし、その後の活動にも影響を及ぼした。


小室氏のキャリアを総括すれば、TMネットワークで世に出て、Globe、安室奈美恵氏などを売り一世風靡したに尽きる。
彼自身がメンバーとして関わって売れたバンドはTMネットワークとGlobeだけであり、彼の音楽キャリアの源泉はそこにある。

残念ながらGlobeはKEIKOさんの病で活動が出来ない。

TMネットワークは何等かの理由で人前に出て来ないが、これはある意味で自己キャリアの否定をしているに等しい。小室氏に限らずTMネットワークのメンバーはソロアーティストとして市場価値がある訳でなく、常に他者との共存でその才能を発揮してきた。(これは多くのバンドメンバーに共通する点だ)

この辺りがソロ活動で生き残っているミュージシャンと決定的に違う点だ。
従って小室氏の活動にはかつてのバンドメンバーの協力が必要だが、長年実現していないということは
人間関係が切れてしまっているのだろう。

エンタメ業界のように成功例を出す事が稀で、なおかつ長期的な活動戦略が必要な業界において、価値のあるバンドでの活動が出来ないのは決定的に痛い部分だ。
長期的にはTMネットワークはいつでも再開できるようにしておきべきだった。核となる活動を失ったために時流に乗れない時期を迎え代替策がなくなり、本人の活動の限界が早まったと言っていいだろう。

冒頭に書いたミュージシャンたちを見れば分かるが、彼らは直近において新作のヒット曲はない。それもでやれているのはロイヤルティーの高いファンの支えがあったからだし、支持が切れないように自分の価値の維持に努めていた点も大きい。従って地道な努力の賜物と言っていいだろう。



このようにミュージシャンが長期に渡って高い価値を維持して活動を続けるのが、どれほど針の孔を通すようなものかお分かりだろう。
日本には数十名程度この孔を通った人達がいるが、いずれに独自の生き残り方法と個性を展開している。


ミュージシャンとして一線で生き残る事がこれほど難しいというのは還暦を迎え苦境の会見を行った小室さんが一番感じていることだろうと思う。

かつては一斉風靡した多くのフロント・ミュージシャンたちは、全国のライブハウスやカフェ程度の店を廻っての演奏活動やその他の周辺業務を支えにして生計を立てている。完全に音楽を中心中心とした活動で生きていると言えるのは、小田和正氏、山下達郎氏、井上陽水氏、矢沢永吉氏、坂本龍一氏など本当に極々僅かな人たちだけだ。

かつての人気者たちも年齢と共に地方の旅暮らしを余儀なくされ、体力的にも相当に堪えるはずだが、やり続けないと食えないし自分のパフォーマンスも衰える。
華やかに見える彼らにも、活動規模には様々なグラデーションがあり、羨むようなレベルにいる人達は非常に僅かな一部だけだ。


そういう意味で私のような凡人は、中高生時代に憧れたミュージシャンに「なれなくて」良かったかもしれない。私ではとても務まらなかっただろうと思う。(実際35歳で諦めた)

多くの音楽ファンは、オヤジバンドとかを一生やっていた方が普通の丁度いいのが音楽や演奏活動の世界だろう。




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