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これからミュージシャンを目指す若い人たちは次世代のビジネスモデルに注視せよ [独り言]

これからミュージシャンを目指す若い人たちへ。

2015
1月(2017年11月追記)

面白い記事を見つけた。以下です。 

Alphabet他から調達した7000万ドルで、UnitedMastersはレコード業界の革命を狙う

http://jp.techcrunch.com/2017/11/16/2017-11-15-united-masters/ 

ネット時代に即したミュージシャンの生き残りを提案しているという意味で新鮮だ。
もうレコードメーカーの時代じゃないという点で私とも共通している。
日本はモノを買う文化が残るので、上記のビジネスモデルの導入が遅れるだろうが、時間の問題だろう。 

もう一つがこれ。

音楽業界はポスト・デジタルの時代

https://www.businessinsider.jp/post-165759 

現代において、「音楽ビジネスの軸は興行と《ブランド=マーチャンダイズ》の2つになっている。」がこのブログの記事の結論だ。「興行」は音楽に紐づくビジネスだが「ブランド」はアーティストが売れた結果として起こる。従ってアーティストが売れなければこの2つのモデルを成立させられない。さて、そもそもこうなるとミュージシャンという職業を目指す意味は何だろうか?となる。
ミュージシャンは自身が生み出す音楽をマネタイズするというビジネスモデルで、その牽引をしてきたのがレコード、CDだった。現代ではそれがほぼ無くなった。

追加でこれも。

世界の音楽市場の足を引っ張っているのは、日本の音楽業界だったhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/55423 

さて、まず結論だけを先に書いておきます。


◎まず、音楽ビジネスモデル以前の話をします。

(1)音楽に限らないが、特に芸術的才能とは遺伝的要素に依拠します。歌が上手い、メロディーセンスがある、演奏が上手いなどです。こうした才能は、先天的で後天的ではないというのが私の結論です。実際、音楽的才能の遺伝的影響は科学的な証明がなされており疑いの余地のないというのが科学的定説です。
従って才能が有る人が不断の努力と経験を積むから勝ち抜けると見るのが自然で、残念ながらそうでない人は音楽を仕事とせず、趣味として一生付き合って行く方が人生を豊かにすると考えた方が自然でしょう。
冷酷な言い方だと理解してますが、これが私が経験して得た事実と一致している部分です。

(2)ミュージシャンとして音楽を中心とした収入だけで成立する人は数百万人に一人程度の確立でしか現れません。従ってミュージシャンを職業にしようと思う人は、周辺に副業を持っていなければ成立しません。音楽教員、講師等々です。

参考データ:70歳を超えて一線で残っていると言って良いミュージシャンは3名。加山雄三氏(武道館クラス)、吉田拓郎氏(大ホールクラス)と小田和正氏(アリーナクラス)。それぞれの年の出生数は、218万人、157万人、267万人だ。つまりこのレベルのミュージシャンの出現確率は平均しても214万分の1という事だ。時代の変化を乗り切れて生き残れる人材というのはこの位の希少性でしか出現しないという例だろう。これは他の分野も同様だろうと推察できる。

◎従って今後のミュージシャンは、旧来のやり方では職業としてのミュージシャンを維持することのできない時代になりました。
音盤が売れないため、ミュージシャンのブランドの確立方法はこれまでとは違う時代になってます。これからの時代、国民的歌手は出て来ないでしょう。セグメントされたファンが強く支持するミュージシャンが生き残り、それ以外は淘汰されるでしょう。
分かり易く言えば、強い支持基盤であるコアファンのを持たないミュージシャンは音楽ビジネスを成立させられない時代だということです。これまでは小さなコアファンと大きな浮動するファンの両方で成立させられましたが、今後は大きなコアファンと浮動するファンの組み合わせでないとビジネス出来ません。
従ってこれからミュージシャンを目指す人たちには非常に不利な時代だと言えるでしょう。
しかしツイキャスなどから発信して両国国技館を満員にするようなレベルの人たちもいますからこれまでにない様々な活動が成功を容易にするかもしれません。
また実際にそうした人たちは出現しております。
それでもこの世界で成功するのは非常に僅かな人たちだという事は認識するべきです。


以下は、上記の解説です。もしご興味があれば読んでください。

 

音楽業界がこんな感じに変化するとを1990年代以前からの音楽業界人のほとんどは誰も思っていなかっただろう。
実際、現代(2018年)では私が音楽業界を過ごした
1980年~1999年の約20年間と2000年代以降とは業界の様相が全く違ってきている。

最近(2017年8月)こんな記事がアップされていた。

 

音楽の世界に「やりがい搾取」はあるか? 元プロサックス奏者にあれこれ聞いてみた

(前・後編) 

 

http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1708/05/news005_3.html


    http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1708/09/news006.html




この記事に書かれていることは私の印象と余り変わらない。30年前でも現代でも、プロの世界はどこでも同じだが、トップの数%に残るのが大変なことだ。そしてそこに残らないとうまみも成功体験もないのがプロの世界だ。
記事にも書いてあるが、多くのミュージシャンを目指す連中は、辞め時を間違えて人生を狂わすケースが殆どだし、突出した才能で勝ち抜く分野を目指す人間は、自分の才能を見誤る場合が多い。
記事では26歳を1つの区切りとしているが、その感覚値は正しい。後述するが、ミュージシャンにとって26歳とは成功するかしないかの「指標年齢」と言っていい。
昨今だと30歳を過ぎてもまだ挽回可能と信じてチャレンジする人が少なくないが、仮に30歳までだとしても、希望だけを根拠に結果を出せないまま先に進む人たちがいたら、「人生をドブに捨てるような行為」とだけ言っておこう。また私が過去に知り合った人たちにもそういう方々が多く存在した。

そもそも自分の能力を客観的に判断出来ない時点で、もはやその先の見込みはないのだ。26歳位でそれをやれる人もいればやれない人もいる。だからやれない人の末路はなかなか辛くなる。

ミュージシャンが食い難い職業になった最大の理由は、
CD(パッケージ)が売れなくなったからだ。世界的な視野で言うと、この20年で音楽販売のマーケットは半減しているし、日本の音源マーケットも過去20年で三分の一になってしまった。
これは決定的なビジネスモデル変化だ。

つまりミュージシャンという職業は、収入の柱を1つ失っているというのが現代と過去の大きな違いなのだ。
一部上場企業の経営的な感覚から言うと、斜陽産業分野は会社の事業として必ず撤退となる。音楽音源産業は、マクロ的にはそういう事なのだ。
もっとわかりやすく言えば、音楽産業は大勢が食えない事業なので、参入するなら相当なリスクを覚悟するか、圧倒的に勝てる戦略を持って挑むかのどちらかという事になる。

特にミュージシャンにとっては不利な環境だ。
ミュージシャンは、自分が生み出した音楽を「金に変える方法」を大きく変えなければならなくなった。
そもそも論だが、ミュージシャンと言われる人は平均的にビジネス面に弱い。
もちろんビジネス感覚もなく成り立っている人は少なからずいるには居るが、現代において決してビジネスに無知で良い訳はない。

ミュージシャンのような人種にとって金の問題をアカラサマに標榜するのは決して粋とは言えず、どれだけ色々な音楽やコンテンツを知っているのか?、また演奏できたり演じられたり出来るのかという方が圧倒的に彼らにとっての価値感度が高い。もちろんそういう人がいても問題ない。

若い時はひたすら音楽に没頭するのもいいだろう。しかし、誰しも霞を食っていけない以上、
結局は自分の経済基盤が問題になり、40歳過ぎて、若いサラリーマンでも知っているような最低限度のビジネス知識に無知であるのはバランス感覚としてはどうかと思う。
イイ年をしてビジネスに無知過ぎるのは、音楽好きを超えてただのバカと言われてしまっても言い過ぎではないだろう。

1960年代から2000年位まではレコード会社が音楽産業の中心だった。当然だが売上総量が最も大きかったのがレコード会社だったからだ。
彼らのビジネスモデルは、売れたアーティストから大幅に搾取して新人アーティストへ投資して育成し、次の売れるアーティストを世に出すというものだった。
当時は10人のアーティストが居れば凄く売れるのは1人、まあまあが3名、残り6名は赤字っていうのが相場だった。
従って凄く売れているアーティストは6名の赤字アーティストを育てるため本来得られるべき金銭を搾取されているに他ならない。
ただ、そのアーティストも以前に売れた誰からの投資で売れた訳なので文句が言えないという感じなのだ。しかしこのサイクルは現在では通用しない。
もう投資元がなく、投資先もないからだ。

現在のレコード会社は全アーティストから利益を出そうとするため新人を育成できる環境になく、従ってスターが出にくい時代になってしまった。
また、現代においてレコード会社と契約することが必ずしもアーティストのためにならないという事実が音楽を志す連中に明確に広まってしまっているため、ちょっと賢いミュージシャンは自分たちの仲間でインディーズ活動をし規模を拡大している連中も多い。

この辺りになると、現代の若い連中の方がビジネス感覚があると言えるかもしれない。
とあるバンド事務所の社長が言うように、「メジャー契約をゴールに思う連中は時代錯誤がはなはだしいので一緒にやろうと思わない」と語っていたが、もう時代はレコード会社を不要と言っているのだ。
それに気が付いていないのはレコード会社の人たちだけかもしれない。

私も昨年、あるミュージシャンからメジャー契約を相談されたので、止めておけと回答したが、結局彼は契約し、現在、最初に発売したCDが全く売れず、契約に縛られて活動が氷漬けになってしまい休業状態だ。
日本のレコードメーカーには育成の余裕がないのだから当然だろうし、そういう時代を読めない若者には今後成功の確立が高くならない。

CDが3,000円で売っているとして、全曲書いて歌ったミュージシャンがもらえる金額が幾らか想像つきますか? 
著作権でもらえるのが1枚で約80円。歌唱印税が1枚で約30円、合計110円程度だ。
ちなみにレコード会社はジャケット控除という「インチキ印税」を取っているが、これは通常レコード会社が取る原盤印税とは別に設定されるレコード会社の「収入」だ。

このジャケット控除というのは全くロジックのない控除で、レコード会社の主要な収入源になっている。有名なデザイナーが仕事してくれるならともかく、メーカーの社員デザイナー辺りが仕事をやってもこの率だ。
これが10%。つまり約300円だ。

この設定は明らかに音楽そのものを作ったミュージシャンよりも多く不可解だろう。

普通のミュージシャンはこれに疑問すら抱かない。(もちろんレコード会社は原盤制作と宣伝等に投資をしているという事は理解した上だが、音楽そのものがなければレコード会社は仕事そのものが無い)

さてこの条件でミュージシャンが100万円を稼ぐには何枚が発売されればいいでしょうか?(印税は売れた枚数ではなく出荷枚数で決まる)
約1万枚だ。ちなみに同じ金額を稼ぐのにレコードメーカーは1/3以下でこの数値を達成する。おまけに原盤印税が10~15%程度ある。
簡単に言えば、レコード会社は、音楽を作ったミュージシャンの6倍の速さで売上を作って行く。もちろんメーカーは音楽制作に支払った金額を償却しなければならないため、未償却までの間は利益が出ないもの事実だ。
なら利益が出てからはミュージシャンへの分配配分が多くなってしかるべきだろうが、実際はそうならない。
従って利益が出てからの段階でレコード会社は殆どお札を刷っているような状況になる。

現代において、年間で10万枚以上を超えて売るアーティストは少数派だ。つまり、殆どのアーティストにとって音源からの収入は助けにはなるが、生活基盤となるような存在ではないのだ。あの世界的ミュージシャンのドナルド・フェイゲンですらCDの印税では活動出来ないと言っている時代なのだ。

 

現在最も有効な手段はライブ活動とマーチャンダイジング(グッズ販売)だ。音楽業界は確実に「製品から体験と体験に付加したビジネス」にビジネスモデルを転換しなくてはならない時代になっている。
またライブの記憶を封じ込めたグッズはそれに付加価値を与えている。このグッズの部分は、一番最初に書いた「ブランドビジネス」に直結している。通常グッズはアーティスとのライブやファンクラブでの販売が一般的だが、海外の場合はそこから一歩出てブランド製品として販売しているという訳だ。

さて、ライブ活動はそれ自体をコピー出来ない点と価値創造の点で最も強力な武器となる。そのためここ
5年程度で市場規模は1000億円から倍の2000億円を超え始めている。2017年中の市場予測は5000億円となっており、CD市場を凌駕し音楽ビジネスの核と始めている。しかしライブビジネスは、会場と集客いう物理的環境の制約をハッキリと受けるため、日本国内のマーケットが1兆円になる事はない。野外を入れても難しいだろうと思う。少なくともアジア地区において、日本のエンタメ市場は最も大きい。
今後は動員数が確実なミュージシャンたちが圧倒的に有利になり、新人や長期的展望のないミュージシャンは圧倒的に淘汰されてしまうだろうと思う。



以下のURLで見ることができるリストは1970年~1976年に活躍していたバンドやミュー
ジシャンたちだ。


https://blogs.yahoo.co.jp/starr_pegasus_of_the_giants/16334242.html?__ysp=MTk3MOW5tO%2B9njE5NzblubTjgavjg4fjg5Pjg6Xjg7zjg5%2Fjg6Xjg7zjgrjjgrfjg6Pjg7M%3D


現代の若い人たちにはこれらを見ても何の事か分からないが、このリストにいる人たちがデミューから40年経過した今、リスト内で見ることができるミュージシャンで未だに現役で一線級でやれているのが、本当に極僅かだということが分かる。
山下達郎氏、小田和正氏、The ALFEE、矢沢永吉氏、細野晴臣氏など残ったのは誰でも知っている人たちだが、スタジオミュージシャンとして現在でも活躍している人たちを入れても、ミュージシャンを職業とできる才能を持った人はやはり全体の極僅かという表現が適切だろう。いかにミュージシャンを職業とすることが稀有だというかが分かるリストだ。

最近こんな記事も見つけた。

「キャンピングカーで全国を回る自営ミュージシャンから学ぶ、新規開拓営業の極意」
http://sales.typemag.jp/article/2273


すわだいすけ氏と伊澤ゆくさんによるアコースティックデュオ・Sleepyhead Jaimieの活動を記事にしたものだ。
もちろん全国を旅芸人のように歌い歩くという方法は昔からあったのだが、彼らのように若い世代で音楽を仕事として目指す人たちがこれまでにない数でこうした方法を取っている時代は初めてだろう。
いわゆるジプシー的な生活だ。1960年代のヒッピームーブメントの時、欧米で自由を追い求めてジプシー生活を始めたり、日本国内でも会社や社会に縛られず自給自足を始めたりした人々がいたが、直ぐに壊滅した。理由は簡単で経済的に崩壊し、生活を維持できなかったからだ。

別の記事にも書いたが、音楽産業が崩壊し始めている現代で、元音楽業界に生息していたオッサンとしてはちょっと彼らに言っておかねばならない事がある。


”この方法で死ぬまでやり続けられますか?”という事だ。
若者の多くは”やる”と答えるだろう。若いから当然だ。

ライブハウス規模(100名以上の集客)を定期的に回り、確実に来客があり回数をこなせるなら、それなりに食えるというもの事実ではある。
しかし食えるというレベルにはかなりのグラデーションがあると言っておこう。仮に1か所のステージで10万円のギャラがあったと仮定しよう。年間150か所をやって1500万円の売上だ。これから移動、宿泊等の経費を引いた粗利(限界利益)は一体どの程度だろう。ユニット以上のバンドのような演奏構成の場合なら、手取りはメンバーで割らなくてはならなくなる。正直1か所のライブで10万円なんて普通はもらえない。普通は十数名~五十名に満たないだろう。この規模で演奏してもらえるギャラは数万~六万円がいいところだ。
従って売上を増やしたければ、動員数を上げるか数をこなすという事になる。

実際、キャンピングカーで全国を廻るSleepyhead Jaimieのメンバーは単純に年齢が若い。

つまり肉体的にも精神的にも無理が利く年齢だ。
しかし、現在オッサンになった自分のリアリティーは、あのような生活は、中高年、もしくは高齢になってから、日々仕事として維持するのは殆ど無理だという事だ。
そうなると若い時に稼ぎ、中高年になったらスローダウンもしくは引退するというのだろうか? 

サラリーマンの平均的な生涯年収は2.2~2.5億円といわれる。これが額面収入だ。実際のサラリーマンの多くは年金や保険額の半額を企業に支払ってもらっているし、企業によっては住宅手当等もある。従って企業側から見れば平均的なサラリーマンでも3億円以上程度を払っていることになる。
これを平均すると年収800万円強程度になり、フリーランスのミュージシャンとしては平均的にこの程度を稼いでいなければサラリーマンを超えられない。

もちろん生涯年収が100億円を超える人がいるのも事実だが、多くのミュージシャンはサラリーマンの平均値にも届かないというのも事実だ。

さて、現在でも活躍中のデビュー40年選手の音楽活動を見ても分かるように、今後しばらく、ミュージシャンの最大収入源はライブ集客とグッズ(ブランド)になる。
それでも今後20年以上を考えると、このビジネスモデルも通用しなくなるだろうと思う。実際、音楽を消費する人口は減りつつある。これは他の分野も同様だ。金を払ってくれる絶対数が減る中で、特に衣食住と全く関係ないビジネスをしようと思ったら、相当な付加価値が必要な事は理解できるだろう。

本来ミュージシャンのビジネスモデルは、フロービジネスからストックビジネスにしなければならない。フロービジネスとは時代に行き交う客をその度毎に捕まえるというやり方で稼ぐ方式で、ストックビジネスとは、客を積み重ね減らさないという方式だ。
ファンクラブがこれに当たる。だからミュージシャンのストックビジネスで最も大事なのはファンクラブの会員数になる。B'z辺りだと会員数が25万人を程度らしいが、これくらいのストックがあるとビジネス的に困る事はない。25万人が1人平均年間2万円使ってくれたと仮定したら売上だけで50億円になる。1つのバンドの売上としたら相当な規模だ。

それ所以に、ファンクラブがコアになり裾野をどの程度広くとれるかが今後のミュージシャンビジネスの勝負どころになる。
また、山下達郎さんのように、ライブのチケット争奪戦が過剰になり、ファンクラブの新規募集を打ち切ってしまうほどのレベルになるのは例外的であるが、これからミュージシャンを目指す若い人たちは、「ファンのストックこそが未来の活動を担保する」という事を忘れてはならない。
ストック出来ないミュージシャンは生き残れない。
それゆえ新人ミュージシャンには辛い時代だと言っているのだ。

今後の時代において、ミュージシャンが文字通りの意味で余裕で食えるレベルは、個人当り年間2万人以上の動員だ。事業規模のグラデーションもあるのでこれ以下は総じて十分ではないとだけ言っておこう。

Sleepyhead Jaimieのように全国を丹念に巡り、また同じ場所に戻ってライブをする場合、前回よりも客が増えていなければ持続可能性が薄くなる。
減っていればかなり問題だと思って方がいい。
客が増えてくれば会場を大きくできるだろうし、演奏環境も良くなり収入も増える。今後の時代のミュージシャンは、明らかにコアファンとそれに次ぐロイヤリティーの高いファン層を自らの活動で積み重ねて確保出来なければ職業としては行けないのである。しかしこれは相当大変な事だ。ミュージシャンが食えないと、その周辺にも影響が出る。

音楽業界でミュージシャン、スタッフで生きてきた人たちが本業で生業が立たないと必ず行く道が「音楽学校の常勤、非常勤の講師」だ。
正直、常勤講師になれたならばかなり良い方だ。
大抵の場合、講師は非常勤で1コマ辺りのギャラも数万円程度だ。コマ数が多ければそれなりの収入にもなるだろうが、人気の学校であれば講師の競争も激しい。また教える側もそれなりの準備に時間もかかるため、費用対効果で言うと講師生活は決して楽ではない。
少子化であるが、音楽学校は乱立気味で、講師の力量も色々のようだ。また、通常音楽学校の講師をする人たちは、現役では忙しい人たちではない、つまり現役ではないラインを外れた人が多いため、過去の経験を生徒に伝える人たちとしては非常に有効だが、変わりつつある業界のフロントラインの情報を伝える人たちとしてはやや心細いと思う。
それでも元音楽業界人にとって、講師の仕事は重要な収入源であるし、彼らの情報は次世代への橋渡しとしては有効だろう。

さて、2017年に入って音楽業界のあちこちから以前なら聞かないような話を耳にする。
ロック系、ポップス系アーティストで結構ネームバリューのある人達でもライブ集客に苦戦しているという事だ。ここでいうライブ集客とはホールツアー級以上を埋める事を指す。1名のミュージシャンが一部上場の一般サラリーマンよりも安定した生活と音楽活動を送るには、年間最低でも2~3億円程度の売上がないと難しい。事務所を運営し、ある程度の上流的な生活を維持しようと思ったらそれが最低ラインとなる。
仮にライブ活動だけでこの売上を作るためには、チケット代7,000円としても約3万人以上の動員をする必要がある。先ほど5万人の動員がないと余裕が無いと言ったのはこういう意味だ。
ライブビジネスはとにかく固定費との闘いなので、動員がないと全く成立しない。YUMINGが2016~2017年にかけて彼女のキャリア最大数のライブをこなすが、60歳を過ぎた彼女が、過去の蓄積の上に成立させてきた生活を維持しようと思ったら、総動員数をあげるしかない。(おまけに彼女はツアーを2~3年に1度程度にしていることもあるから余計負荷がかかるが、苗場のライブは毎年行っている)

こうした中で、ホール級以上で安定した動員が見込めない苦戦チームは、いわゆるディナーショー的なスタイルであったり、場合によっては、全国の商業施設(イオンなど)を数人のチームを組んで廻るようなツアーで口糊をしのぐような活動が実態のようだ。
とにかく印税収入の確保がCDの売上の落ち込みで難しいため、自分が稼働して稼がなければならない時代になってしまった。体を壊したらお終いと言ってもよいし、歌手なら歌えない時点でキャリア終了だ。
従ってプロで活躍するレベルでさえもこれまで以上に大きな収入格差が生まれている。言い方を変えれば中間層的なミュージシャンが消えたという事だ。従って一生食えるミュージシャンになるのは相当な能力を求められるという事に尽きる。

過日、声優の大塚明夫氏が「声優魂」という書籍を出版した。彼の序文にはこんな文章が添えてある。
「声優だけはやめておけ。嘘偽りなく、これだけです。」
これだけのキャリアの人が放つと、物凄い言葉だ。

私の言いたい事もこれに似ている。
「素敵な職業だと判っているが、本物でないならミュージシャンだけはやめておけ。」
若い頃ミュージシャンを目指した私が言うのもなんだが、これが現代の真実だ。
正確に言うなら、「1億人に1人と判るほど明らかな才能に恵まれていると判らないのであれば、ミュージシャンだけはやめておけ。」となる。

さて、現在のレコードメーカーやミュージシャンは、今後の存在意義を問われている。CDという最大の主力商品が売れないとなれば、誰が考えても殆どのレコードメーカーの存在は不要だ。現段階でCDの年間マーケットサイズは2000億円を下回り初めているが、その中でもAKBと嵐だけでの売上は数百億円規模になり、それ以外のアーティストを合計すると151600億円程度だろう。

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1600億円程度となると、他業種であれば1社程度の売上に相当する市場サイズだ。現在大手と呼ばれるレコード会社はソニー、ユニヴァーサル、ワーナー、ビクター、エイベックスなどで、コロンビア、キング、ポニー、徳間、クラウン、パップ、ドリーミュージックなど中小を含めれば数十社がひしめく。こんなに要らないだろう。昨今ワーナーがどこかに吸収されるという噂も聞くが、明らかに市場規模に対してメジャーレーベルは多すぎる。

経済学の常識で言えば小さいマーケットに多数が参加するとシェア争いが激化して格差が大きくなる。従って完全な勝ち組と完全な負け組に分かれることになり、実際その現象は顕著に成り始めている。ここ数年の間にレコードメーカーの再編は不可避で、最終的には45社程度に収まるだろうと見ているし、最終的には部門程度になってしまうだろう。
最近はAKBやK-POPで代表的な、ハイタッチ会、ファン交流と称したイベントで売り上げを維持しようと必死だが、商品であるCDの相対的価値を自らが率先して下げてまでして売るレコードメーカーはのこうした姿勢は、既にこのビジネスが終焉に近いと認めているようなものだ。

インターネットによる視覚的接触が主流のこの時代に、音源という聴覚主体の製品価値が下がるのは致し方ないのだが、今後もミュージシャンは、ライブ動員のツールとして音源を出すという手順を余議なくされるだろうし、狭いマーケットに参入すると起こる中間層的な存在の消失、つまり超勝ち組と超負け組しか存在しなくなるのが将来の音楽業界の世界だ。そしてかつての中間層的な位置にいたようなミュージシャンは小粒のビジネスを廻す程度に落ち着く。かなり良くても地方のライブハウスを転々と廻り、一晩で数万~10万円程度を受け取るレベルだ。

これで週50万円を稼いでも年間で2500万円。でも移動、宿泊、リハーサル経費、スタッフ人件費なども含んでいるから手取りは知れている。加えて社会保障費や税金を引いたら手取りは半分位だろう。実は自由業者がサラリーマンと同等の生活レベルを維持するにはサラリーマンの年収の最低でも2倍以上はないと同じになれない。50代で一部上場のサラリーマンなら平均で800万円以上の収入があるのだが、同じ年齢のミュージシャンが同等以上の生活をしようとおもったら1500万円以上の収入が必要だという事だ。前述通りなのだが、年間2500万円程度だと人を雇うのは難しい。雇われた方も厳しい。一部上場企業のサラリーマンの単位売り上げ目標は、最低でも5000万円で、1億円ってのが相場だ。それ以下だと事業として継続するのは困難なのだ。


またスポティファイなどの配信サービスが拡大していると云うもののCDと比べた収益は、日本に限れば利用者数が十分とは言えず、日本の配信の市場はだかだか400億円だ。最盛期8000億円のCD市場と比較しても20分の1。AWAやLINE MUSIC,APPLE MUSICなども林立するが、私の予想では少なくともこうした配信音楽サービスは、日本においてほとんどが頓挫するとみている。まず、全音楽をカバーしている配信サービスがない。自分の好きなあるミュージシャンはAPPLE MUSIC、ある人はLINE MUSICと別れてしまっている。簡単に言えば使い難いのだ。
携帯の「レ点営業」でボトムの会員を獲得して事業成功している”BBTV”のような強制入会的(忘却入会とも言える)モデルならともかく、自由意志で入会を促すこの手の音楽配信サービスは、特に日本では相当厳しいと思う。また音質もYOU TUBEのちょっと上程度であり、そもそも音楽端末でない携帯電話というプラットフォームの持つ意味は「お手軽音楽利用」以外にないだろう。
とある音楽出版社の人間が言っていたが、500万回の視聴で入る印税は35万円程度ということだ。レコード会社は原盤使用権を確保できるため積極的だが音楽出版社にとって印税配分の手間の割りに見入りの少ないこのビジネスは、余り魅力的ではないという。
また、「レ点営業」への規制強化により、こうしたビジネスモデルは成立が難しい時代になりつつある。


こうした状況下、音楽業界の中で特にミュージシャンは、往時と同等の売上や利益を見込めないのが実態だ。この辺りの事情は以下のサイトに非常に詳しく載っているから読むべきだと思う。

http://www.musicman-net.com/SPPJ01/67.html

http://www.musicman-net.com/SPPJ01/68.html


 

こうした時代背景の中でも、ミュージシャンを目指す若者は少なくない。東京・渋谷に限らず都内では路上演奏をする若者を見かけない日はなく、また都内のライブハウスでのアマチュアバンドの出演数も以前と比較しても落ちているとは言えない。
しかしミュージシャンにせよビジネスサイドにせよ斜陽産業である音楽業界に参入するという事は以前に増してリスクが高い事を覚悟せねばならない。レコードメーカーは売上や利益を減らしているため、新規投資に慎重だ。つまり新人育成にかける時間や資本に余裕がない。従って即戦力的なミュージシャンを求めるが、そういう人材はごく稀にしか居ない。

我々はミュージシャンと言うと、サザンやB’z、矢沢永吉、ミスチルなどのスター級ミュージシャンを一般的な姿として見がちだが、彼らは業界の中でも極々稀なスター成功者だ。

でもこうしたミュージシャンが存在したのは、この世代での参入者が多かったからに他ならない。
逆に、参入者が減ると有能な人間が出る確立は確実に減少する。従って質が低下し、ひいては産業自体を疲弊させるという悪循環に陥る。実際既にその傾向が出ている。口パクライブ、特典付き誘導でのCD販売、演奏能力の低いミュージシャンたちなどだ。

実際、ミュージシャンで年収数千万以上というのは全体の中でも極僅かな存在だ。
従って他の一般的な連中は総じてこのレベルからは程遠い生活を送っており、ピンキリのキリの連中だと年収
1300万円なんていうのもザラだ。
これだと同年代のサラリーマン以下だし、ミュージシャンを名乗っていても、実際はアルバイト的な仕事が主務で、とてもミュージシャンを名乗るのはオコガマシイという人だって多い。そういうレベルでも、自分の事をミュージシャンやアーティストと名乗る人は多くいるのだが、ちょっとオコガマシイとも言える。ミュージシャンは職業なので、ミュージシャンと名乗るなら、主収入がミュージシャンとしての活動で賄われていなければならないだろう。

実際私が昔関わっていたギターリストの中にも、非常に有能にも関わらず仕事は不安定で、40代の彼は殆ど奥さんのヒモのような状態な人もいる。中年期になってこれだと先々が辛い。

ピンのミュージシャンでも音楽だけの収入で活動している人間は殆どいない。テレビ、CM出演や講演、学校の講師、ボイトレ、営業的な演奏活動など様々な「副次収入」を組み合わせてビジネスを維持しているのが実態だ。これはGLAYのプロデューサーでもあった故・佐久間正英氏も同様の趣旨を著書で語っているが、これが現実であり事実だ。副業の方が本業を上回る自称ミュージシャンは意外と多いのだ。ミスチル、B'zは例外中の例外だと言っていいだろう。


実は私の身内や知り合いにもミュージシャン志望をしている人間がいる。私のように、長年音楽業界で本物の一流のプロに接してきた私の目は自然と厳しく見がちだが、ミュージシャンで
40年近く食える連中というのは、若い頃から「圧倒的」な才能に恵まれている。
だから、ミュージシャンになれる人は、僅かな例外を除いて、殆ど生まれつき決まっていると言っても良いだろう。つまり選ばれし者たちなのだ。(極稀に後天的にそうした才能が開花する人がいるのは事実。)
唄の上手い人、良い曲がかけるセンスの人、楽器が上手く演奏出来る人というのは、基本生まれつきの才能に過ぎない。そういう才能を持った人が何らかのきっかけで、その才能を伸ばす事に時間を注ぐ事によって開花するだけなのだ。我々はメディアを通じて成功者を沢山見ているので、誰でも成れそうに見えるのだが、20年を超えてミュージシャンを職業としている人たちは数える程というのが現実なのだ。
足の速い人は生まれつき速く、その才能を開花するキッカケを得て時間を注いだ結果、その先に進むのだ。元々足の遅い人間はどんなに努力をしてもオリンピック選手にはなれない。

音楽もそれに似ていて、素養がなければどうにもならないのだ。従って素養がないのに夢を見て努力をする人は、人生をドブに捨てていると言ってもいい。
芸事の世界はどこも同じだが、声優魂の中で大塚氏が言うように「ハイリスク・ローリターン」というのが現実だ。

私の身内のA君は、
28歳の現在、傍目に見ても才能の片鱗もないが、まだまだ自分の才能を信じており、努力によってスーパースターになる夢が実現出来ると思い込んでいる。彼の年齢だった当時の自分を考えれば、彼の夢追い人は黙って見守るしかない。だが残念ながら彼は音楽を職業にすることは出来ないだろうし、私以上にリスクの高い中年~高齢者人生を歩むだろうと想像しており、痛々しくて言葉もない。また私が最近まで関わっていたバンドのギターは、30歳を過ぎてもまだ諦めきれないのか、弟とバンドを組んで活動をしている。しかし、彼に栄光が囁く事はないだろうと思う。

音楽で飯を食うためには、既に売れている連中には無い、特質や才能で勝って行かなければならない。売れている連中が座っている椅子は、その人間が死ぬか、売れなくなるまで空く事はない。
桑田佳祐氏のポジションは彼しか座れず、ミスチルの桜井和寿氏も同様だ。
B’z、ドリカム、矢沢永吉氏、井上陽水氏、山下達郎氏、小田和正氏など、声や曲を聴けば直ぐに彼らと分かる印籠のような個性を持っていなければミュージシャンを“職業”には出来ない。
また才能の開花とブレークはシンクロしない。才能があって開花時期を迎えてもブレークしない人だっている。時代に合わなかったり、ちょっとした大衆の好みを見誤ったりと理由は様々だ。我々はつい桑田佳祐氏や矢沢永吉氏、井上陽水氏、山下達郎氏などの成功事例ばかりに目を奪われるためミュージシャンを目指すと誰でも彼らのようになれそうに思うかもしれないが、彼らは例外中の例外なのは先にも述べた通りだ。
それは違う例で言えば、東大法学部を卒業して官僚になっても局長や事務次官クラスまで行ける人が一握りであるのと似ているし、ある種、どの業界でも数十年という単位でトップに残れる人というのは僅かであるのが当たり前なのだ。特に才能で切り開く分野はこの率が厳しいというだけだ。


また、これは私の持論だが、才能のある連中は殆ど例外なく
26歳までに結果を出す。結果を出すと云うのはヒット曲を世に送り出すという意味だ。従ってそれ以前に当然のようにプロデビューしている。逆に言えば、26歳以前に何らかの形でプロになっていない人は、既にチャンスが無いと言っていい。現代であれば、YOU TUBEを使おうがどのような形態にせよ世間に出る方法が何だろうが、まず26歳以前に音楽を職業の主体に出来ていない人には殆どミュージシャンという地位を得るチャンスがないと見た方が自然だ。

ちなみにヒット曲を書ける才能を持った人は、大抵10曲に1曲は誰でもこれがシングル候補だね・・と思う曲を書いてくる。少なくとも20曲に1曲は間違いなく書く。これをクリアー出来ない人はヒット作品を書く能力がないと判断して良い。30曲で1曲だと職業としてやってゆくのは難しい。逆に言えばヒットを狙わないような音楽活動なら向いているかもしれないが・・・。

従ってこの年齢を超えるとブレークする機会が極めて少なくなると言って良い。この年齢までにヒット曲を出し、その後も何作品かヒットし、ファンを囲い込む事に成功すると初めて10年の活動が可能になる。そしてその後も数年に1作の割合で一里塚のような作品を産んで行けば、20年、30年という活動を維持する事が可能だ。冒頭のYahooの記事も26歳限界説を言っていたが、この見立ては私の感覚値や経験値とも合致している。


さて、現在ミュージシャンを目指している諸君。貴方は客観的に見て音楽的な素養のある人間だろうか?

演奏面で言えば、一流のプロの連中は、既成に発売されているCDの演奏のコードを数回の試聴で取り、同じように演奏できるレベルを持っている。彼らにとって難しいというのは、常人には難しすぎて演奏できないようなレベルを指す。
ただし昨今はツイキャス経由で人気を博している人たちもいる。それでもフォロアー数の多い人達は、演奏も高度でありセルフプロデュースにも長けているようだ。ライブ動員も数千人というツワモノもおり、かつてのようにCDが売れ、テレビに出て、メディアを賑わせた人が売れるという方程式は崩れていると言ってよい。
 


音楽の才能はスポーツと違い、記録を計って客観的に誰でも判断のつくものではないところが難しいのだが、少なくとも唄の上手さや曲の善し悪しは一般的な人でも判断がつくとも言える。

ミュージシャンという職業は他の職業と異なり、非常に民主主義的な洗礼を受ける。つまり大衆に支持されなければ飯は食えないという事だ。大衆の支持がないという事は客観的にはその才能が無いという言い方にもなる。非常にフェアーだとも言える。

もちろん売れない作品や演者の中にも優秀なものや人間が存在している事実はあるのだが、職業に出来ない以上、それらは趣味の範囲と言って過言ではない。職業人(プロ)と趣味人(アマチュア)では自ずとその評価は異なる。

先日、NHKの番組で、映画音楽作家の佐藤直紀氏のドキュメントをやっていた。彼は自身曰く、「私には全く才能がありません。いつ化けの皮が剥がれるか、心配してます、本当にそう思ってます。」と語っていた。
まあ、本当に才能の無い人が20年もこの仕事を続けられない事は明らかだが、彼の言う意味は、それだけ競争が激しく浮草稼業だという事だろう。彼の番組を見ていて彼に仕事が舞い込む理由は理解出来た。

昨今のアメリカでは「music xrayhttps://www.musicxray.com/)」という音楽分析サイトがあり、ここでは過去の音楽作品とヒット性の関係を70以上に分類・分析し、新作のヒット作品の見込みを予測するサービスを行っている。また作品だけでなくアーティストの売れる可能性も予測するシステムまである。

どうやら人間が好むポピュラー音楽は7つ程度ヒット・セグメントに分類出来るらしく、ヒット作品は例外なくその範疇に入るらしい。もはや人間が好み商売になる音楽は、一定の範囲で分析できる時代になっているのだ。

過去に数十万曲という音楽データとヒット結果を照合すればそこに因果関係が見えてくるのは自明の理だが、もはやこうなると音楽に夢があるのか?とも感じる時代だ。レコード会社にデモテープを送ったり、新人開発担当がライブハウスを廻って発掘する時代はまもなく終わりという訳だ。

そのうち人工知能が過去のヒット曲を分析して新曲書く時代になり、完全なヴァーチャルシンガーも登場する時代が来るんだろう。私はそんなつまらないものには興味を惹かれないだろうから、今から20年後も1960年代~1980年代を愛聴していると思う。

私や私より上の世代は、音楽が時代の先端を走り、多くの驚きを与えてくれ、癒され、救われ、楽しませてもらった時代の中を生きてこられたと思う。幸せな巡り合わせとも言える。

しかしこれからはそうでもなさそうだ。そういう時代に突入する中で、未来のミュージシャンを目指す若者たちが、自分の才能の本質を良く見詰め直した方がいいだろう。それでも本物の才能が埋もれずにこの世に出て、人々を楽しませてくれる事は間違いないと信じている。
音楽は誰でもできるが故に、誰でも仕事に出来そうだが、実は全く違う。素人にはここが理解出来ない。一度でもプロの世界をくぐれば、その凄まじさが判るだろうが、少なくともそれにピンとこない人にはそもそも向いていない仕事とも言える。

30歳過ぎて、生活もままならない状態で叶う可能性のない夢を見続けていると必ずしっぺ返しを食らう。
最近私が関わったあるバンドは、一度メジャーデビューしたもののデビュー作が売れず、1年で契約解除。その後ある事務所に拾われて2年ほど活動したがライブハウスで単独公演をしても数十人というレベルのままだったため、解散してしまった。解散に関してメンバー間の不一致もあり、一部のメンバーは仕事としての音楽活動を続けられるように頑張ると言っていたが、俯瞰的にみて職業とするには余りにも技量不足のため早晩人生の見つめなおしをしなければならない日が来るだろう。彼らは30歳周辺の年齢だが、20代に一般社会で通用するような技能も知識も吸収しないまま過ごしてきてしまったため、社会に出て働くにしても職種が限定されてしまうに違いない。

 

音楽にしろ何にしろ、才能がある人は、ほとんどの場合、埋もれる事はありません。特に昨今のようなYOU TUBE時代においては、見つからない方が奇跡的ともいえます。従ってそうした環境下で世の中を貫けないのは、マーケット性がないという証でもあります。
ただ、ネット社会になったため、プロとアマの垣根が低くなったため、玉石混合になってしまった。そのため昔のレコード会社やプロダクションのような本当の才能を見極めるような仕組みが無くなったため、才能の見極めは、マーケットに委ねされてしまった。ユーザーにとっては、多くの玉石混合から才能を探す手間が増えてしまった。
こうした状況下、これから音楽でメシを食おうと考える人の多くは、キチンとした収入を得て、音楽を趣味にして長く楽しむ事の方が、人生にとってずっと良いかもしれないという選択肢を一度真剣に考えてみるのも人生、生活の知恵と言えるのではないでしょうか? 明らかに60~80年代に比べて音楽を職業にするのは難しい時代になっております。
現代の若い層が高齢者の仲間入りする時代、仮に年金が払われたとしても若い時代に取り崩した金を受け取っているだけかそれ以下なので、結局のところ生涯年収範囲で一生をやって行かざるを得ないのだ。

四半世紀前の私の時代なら多少無理して夢を追っていても取り返す方法があったが、現代の若者たちは夢を追って失敗したら、生涯年収を取り返す機会すらないまま高齢者になってしまうか可能性が高い。そうなったら悲惨です。

 

 

「もう音楽では食えない」という記事:鈴木健治氏 

http://kenjisuzuki.net/archives/536 

 

 









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