井上陽水 氷の世界ツアー2014 松戸森のホール21 大ホール(2014年4月6日) [ライブ・コンサート]
私は1959年生まれなので現在54歳だ。「氷の世界」の発売は1973年9月21日。丁度私が14歳(中学2年生)の時だった。まだ連合赤軍という存在によって学生運動が終わりへと向かう時代だった記憶がある。
当時はアナログLP盤。レコード会社はポリドールで、値段は2300円だったと思う。毎月のこずかいが500円とかの時代だったろうか?
だから2300円のLPはなかなか買える代物じゃなかった。多分だが、1974年の正月のお年玉を原資にして買ったんだと思う。
あのアルバムの写真やスタッフクレジット、歌詞カードは隅から隅まで舐めるように見て読んだ。今と違って当時は陽水さんはテレビに全く出ないので、動く姿を見る事が出来なかったからだ。長野県の田舎者の私には、レコードジャケットや雑誌のインタビューに掲載されている写真だけが彼の表情を知る唯一の方法だった。だから妄想に次ぐ妄想を可能とする時代だったと言える。
そしてとにかく聴きまくって唯一持っていた9000円で買ったアコギでコピーしまくったアルバムだった。コピーのための参考に楽譜も買った。
表紙がLPの裏ジャケットを使ったものだった。譜面にない部分は耳でコピーした。
シンセサイザーという言葉も知らなかった。中学2~3年は勉強もしないでこのアルバムと毎日暮らしていたと言って良い位傾聴していた。
最初に買ったLPは、聴き過ぎて音が悪くなったので、2枚目を買って聴いていたくらいだ。
最初にCD化された時、確か「自己嫌悪」が入っていなかった。「めくら」という歌詞が差別用語とされたためだ。
だから私はその後に「自己嫌悪」が改めて入った紙ジャケのCD化の際に買った。なお、現在において、陽水さんは、この曲を唄い際に、「めくら」→「見えない」と歌詞を変えて歌っている。
当時、忌野清志郎の「忌野」ってどんな風に読むんだろうと思いつつ、大学生になってから、この方がRCサクセションのヴォーカルだと知った。
そして忌野清志郎さんという存在を知るにつれ、RCのメロディーや歌詞と「帰れない二人」のメロディーや歌詞のギャップに驚き彼の音楽に興味を抱いた。ちなみに清志郎さんは、本作のヒットで、当時500万円の大金を手にし、ほとんど全てを楽器に変えたと取材で答えていた。
今回のツアーは、5月の東京公演を見る予定だったが、我慢できずに千葉の松戸の初日に出向いた。東京近郊でチケットに余裕があったのがここだけだったからだ。松戸の会場は、写真を撮りに来た経験があり、地の利はあった。
3階席の真ん中付近だったが、ユッタリ見る事が出来る会場で、ステージまでの距離感はそれほど感じなかった。実は開演前にスマホを落とし、行方が分からないまま開演したので、それが気になったためにちょっとライブに集中出来ない事情があったが、それでも本コンサートは初日とは思えない質の高さだった。初日でなおかつ松戸だったりするとゲネプロの延長線になったりする事も多く、パフォーマンスや照明、PAもジタバタしたりするものだ。客席からは余り気がつかない部分でそういう事があったにせよ、特に目立って気になる感じはなかった。ただ、欲を言えば、陽水氏のボーカル音量はもうちょっと欲しい気がしたが・・・。
開演し、ガラシャツを着た陽水氏が下手から登場すると会場が湧く。飄々とした彼の歌声は、本当に心に染み入る。
「氷の世界」のセクションに入ると、当時のレコード通りの曲順で演奏が開始した。特に「あかずの踏切」は変拍子の嵐なので、どうなるやらと思ってみていたが、さすがの演奏だった。ちなみにアレンジャーの星勝氏の監修で再発された本作のスコアーを見ると、「あかずの踏切」は変拍子ではなく、全編4分の4拍子だった。つまり変拍子を装った曲だったのだ。知らなかった・・・・。
「氷の世界」のどの曲が好きかというのは答えるのが非常に難しい問題だが、私が特に思い入れがあるのは「桜三月散歩道」だ。ギターで演奏する時は、3カポのAmだったと思ったが、ちょっと切ない曲調や、ブルージーなサイドギターに魅せられた。学園祭でこの曲を演奏する時、セリフを語る部分は演奏上ちょっと間抜けな感じなった。ご本人の弁では、これまで演奏した事がないと云う事だったので、これが最初で最後かな・・という想いで聴いていた。
「FUN」はギター1本で演奏して聴かせるのが難しい曲だった。帰れない二人は、当時の私の演奏技量をちょっと超えていた曲だったが、大好きな1曲だった。ステージを見聞きしながら、当時の勉強部屋で延々とコピーしていた自分を思い出しながら聴いていた。
今回のバックバンドは、ドラムの山木秀夫氏やギターの今剛氏の布陣ではなかった。多分福山雅治氏のツアーに取られたのだろう。ただコーラスの2人の女性、澤田かおりさんとLynさんのパフォーマンスは、素晴らしかった。彼女たちはそれぞれソロでも活躍しているということだが、かなり目を引いた存在だった。
陽水氏のボーカルは、50代後半から唄い方を変えてきているが、若い時とは違う洗練した声になり、違った魅力を帯びるようになった。ライブの1曲目は、彼らしいというのか、「えっ?」という感じがお楽しみだ。浜松の公演では、アンコールの最後の曲が、松戸のセットリストとは異なっていたようだ。聴きたい曲は沢山あるが、「氷の世界」ツアーではこれまで全く演奏されてきた履歴のない曲が多いため、一期一会という意味でもファンにはたまらない企画になった。
まだまだコンサートをこれから見る方も居らっしゃるので、セットリストはずっと下の方に置いておきます。伝説のアルバムの全曲ライブは、必ず記憶に残るものになるでしょう。
01.LOVE (John
Lennon) 1970
02.感謝知らずの女 「断絶」1972
03.水瓶座の夜 「UNDER THE SUN」1993
04.あかずの踏切り
「氷の世界」1973
05.はじまり ↓
06.帰れない二人
07.チエちゃん
08.氷の世界
09.白い一日
10.自己嫌悪
11.心もよう 同 B面
12.待ちぼうけ ↓
13.桜三月散歩道
14.Fun
15.小春おばさん
16.おやすみ
17.リバーサイドホテル 「LION &PELICAN」1982
18.ジェニー My love 「スニーカー
ダンサー」1979
19.愛されてばかりいると 「LION &PELICAN」1982
20.嘘つきダイヤモンド 「嘘つきダイヤモンド」1995(single)
21.長い坂の絵のフレーム
「九段」1998
アンコール
22.Happy Birthday 「二色の独楽」1974
23.夢の中へ 「夢の中へ」1973(single)
24.少年時代 「ハンサムボーイ」1990
25.いっそセレナーデ
「9.5カラット」1984
ライブサポート:
Piano & keyboards:小島良喜 Chorus
& Synthsizer:澤田かおり Chorus
& Percussion:Lyn
Bass:美久月千春 Drums:野崎真助 Guitar:今堀恒雄 Guitar:長田進
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