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音楽という魔法と現実のミュージシャン生活の展望/ミュージシャンを職業とする事とは? [音楽に関わるブログ]

今後の音楽産業展望(2014325日記載/2017年1月6日追記)

 

戦後に誕生した日本の音楽産業は、60年余りを経て変貌中だ。ituneの出現でパッケージビジネスモデルが崩壊。2016年末、ユニバーサルミュージックが山崎まさよし氏や秦基博氏を要するオフィスオーガスタを子会社化した。オフィスオーガスタの創業者は化粧品事業に集中したかったようで、芸能部門の引き取り手を探していたと聞く。オーガスタの社員の多くは40代と聞くため、外資系メーカーに移籍した事で数年でその命運が変わるだろうと思われる。また所属アーティストもこれまでのように創業者が守ってくれないだろうから、売上のない順に契約を切られる運命だ。
レコードメーカーが既存の事務所のM&Aしたケースは日本ではこれまで殆ど類がない。そもそもオフィスオーガスタに食い込んでいたのはソニーミュージック系のアリオラというレーベルだが(秦基博氏がレーベルに所属している)、どうやら長期に検討をしていたという情報もあるが、オーガスタやソニー内の条件が合わなかったという見方が有力である。当然アリオラから稼ぎ頭が消える訳だから彼らによって生じる売上利益の穴埋めが課題になる。
またオーガスタ側も後継者問題を抱えているという事情もあるようだ。これはオーガスタだけの問題ではないであろうが、オフィスオーガスタには適切な後継者が育っておらず資本規模の大きい法人に身売りをした方が存続できると判断したのかもしれない。これはオーナー経営者による芸能事務所の抱える普遍的問題だろう。
いずれにしても、現代のレコードメーカーは産業構造を大幅に変貌しなければならなくなっている。流通と宣伝力を除くとメジャーと呼ばれるレコードメーカーの優位性はかつてを比較して無くなってきているからだ。夜の本気ダンスや4 Limited Sazabys辺りの活動を見ていると、もはやメジャーレーベルが音楽業界の中心でないことは明らかだ。1970年代の日本のロックがアーティストやスタッフによる自主興行をしつつ、レコードメーカーがそれに乗っかるという経緯で発展した現象が現代に起こっている。夜の本気ダンスや4 Limited Sazabysはその周辺にロック仲間を形成しており、自主興行によって動員を伸ばし、固定ファンを獲得している。ロックの本質的な在り様を考えれば、夜の本気ダンスや4 Limited Sazabys辺りのミュージシャンの生き方は「先祖返り」していると言って良いだろう。

さて、夜の本気ダンスや4 Limited Sazabysの大先輩となる日本のロック・フォーク系ミュージシャンの中ではデビュー30~40周年を超える人たちも出てきている。それらを華々しく迎えられる人たちもいれば、地方のライブハウスで迎える人たちもいるし引退同然の人も多い。そんな人間模様は悲喜こもごもをしているが、それでもそれぞれの人たちがそれぞれのレベルで活動を継続出来ている事は素晴らしいと言える。

実際、ミュージシャンに憧れる若い人たちの殆どは、売れて有名になって金持ちになりたいという俗人的な動機が多いだろうし、それが普通だ。
しかし、ミュージシャンは売れてから人生を全うするまでミュージシャンで在り続けられるかの方が明らかにハードルが高い。
ところで、1947年生まれで現在(2017年現在で70歳)でも確実に一線級で活躍していると言い切れるミュージシャンは何人いると思われますか? 
調べてみました。2名です。細野晴臣氏と小田和正氏だ。ひょっとしたら他にもいるかもしれないが、ネットで調べても彼ら以外には知らない名前が出てくるだけだった。小田和正氏はアリーナ級のツアーをやっているし、細野氏も作家活動も旺盛で、またツアーミュージシャンとしても十分集客している。

1947年の出生数は約260万人。仮に男女半々として、男子130万人だ。つまり、この2名は65万分の1の確立で生まれた天才ということになる。ちなみに翌年の1948年を調べると、故・大瀧詠一氏、谷村新司氏、井上陽水氏辺りとなる。かように長期に渡って活躍し現役でいられるミュージシャンが出現する確率とはこの様に小さいものだと分かる。飛び抜けた才能ってこの位の確率でしか出現しないものなのです。

プロ以下アマ以上の才能の人たちは、30代後半から活動そのものが厳しくなり、40歳を待たずして殆どが生活に行き詰る。このレベルだと、額面月収30万円も厳しいだろう。サラリーマンと違って自営業者のミュージシャンで額面月収30万円は、サラリーマンで言えば額面月収20万円以下程度に等しい。またこのレベルだと殆どは音楽だけでは食えない。

ピンキリ的に表現した場合、ピンは音楽以外にメディア出演や執筆、講師(ピアノの先生なんかを含む)活動、講演活動などで補えれば相当良い方だ。キリとなると、音楽活動自体が副業となる。それでも人生を掛けてミュージシャンになろうという人たちが数多く居なければ、我々がその才能に接する事も少なくなる。

先日、80年に大ヒット作の「ペガサスの朝」を出した五十嵐浩晃氏の取材を間接的にしたのだが、彼のコメントは非常に含蓄があった。
彼はヒット量産のメジャー音楽システムに翻弄され、十二指腸潰瘍になって数年のブランクを経験したという。そしてそれがキッカケで一旦地元の札幌に戻ったそうだ。周囲は都落ちしたと感じただろうが、自分には今考えても適切な判断だったと語っている。
札幌で落ち着いた生活を得てからは書けなかった曲も自然と書けるようになり、改めてメジャーレーベルとの契約を始めたが、基盤は札幌に残したらしい。
その後彼は北海道を起点にした活動に変え、その後30年近く、音楽関係の活動意外にも講演、解説(将棋)、執筆などで生活しているという。彼の発言の中で、「90年代、町内のお祭りに出演してでも唄っていた時、友人から五十嵐がお祭りで唄うの?なんて言われた事があったが、他に(自分は今更)何して食って行くんだよ!!」とい気持ちがあったと語ってくれた。

彼のこの言葉の中に、音楽で食い続ける事の難しさと、続けるための胆力を見た想いがした。池田聡さんという80年代に多くのヒットを出した彼出さえも、スケジュールの大半は、地方のライブハウスもしくはライブカフェでの活動だ。
しかし彼らは昨今増え始めているローカル型ミュージシャンの走りとも言える。その前にそれを始めたのが熊本を拠点に変えた南こうせつ氏だが、東京を起点に活動するミュージシャンとローカル型ミュージシャンという形態は、ネット時代になりツイキャスなどの影響もあって今後一層明確化してゆくのだろう。

そこで今後の音楽産業の在り方を大胆に予想してみたい。
(予想なので各位の意見の違いはご了承ください)

1、
今後10年以内に日本のレコードメーカーは大手4社に集約される。残るのはソニー、ユニバーサル、エイベックス、ワーナー。他はこの4社の傘下に入るか、部門化するだろう。

 

2、メジャーレコードメーカーに籍を置きながら、全国規模に影響を持てるメジャーアーティストと地元に住み、地元を根城にして活躍するローカルアーティスト二極化する。この中間的存在は殆ど希薄化し、長期生存は出来ない。メジャー系は最低でもホール以上のツアーが出来るアーティストが主流となり、全国ツアーで数万人単位の動員が最低ラインとなる。一方ローカルアーティストは、地元店舗、商業施設、公的イベントや公的施設などを中心にした活動が中心となる。いずれにしてもライブ演奏の出来ないアーティストは生き残れない。 

 

3、ローカルアーティスト市場の拡大により、狭いマーケットに新たな競争原理が発生するため、ローカルアーティストの生存競争が一段と激しくなる。従って長期に活躍出来る極僅かな人間と、出ては消える新人~中堅クラスの新陳代謝が起こる。


4、ローカルアーティストは参入障壁が低いため、見込みの甘い連中が挑戦してくる事が考えられ玉石混合となる。そのため若い連中でこの分野に挑戦するが、30歳中盤で行き詰まり、自立していないがために辞める判断が遅くなり、転職等の方向転換するにも一般社内への復帰が困難であるため、中年ニート、引きこもり、パラサイトなどの社会の重荷になるような人間を多数産み出すマイナス面を秘めている。

5、メジャーレーベルの中には、ローカルアーティストのメジャー化を図る動きが出るだろうが、多くは地方での活躍を選択し、メジャーでの活躍に依存しない形を取るだろう。

6、ローカルアーティストは地方で起こったゆるキャラ市場のような全国的なランク付けをする動きが出るだろう。しかし、ゆるキャラと違い、ローカルアーティストは人間なので、そこで一抜け出来ないと生活そのものに影響をするだろう。

7、ローカルアーティストは、音楽活動だけでは殆ど食えない。地元のメディア出演、ネット配信による広告収入、執筆、講演活動、ファンクラブ、イベント制作、など、様々な活動をミックスする必要がある。また自分自身で仕事を生み出す企画提案力が必要となるだろう。
こうした活動を通じて人脈や仕事関係を構築し、長期活動に耐性を作る必要がある。また殆どの場合、受け仕事の選好みは不可能。

 

 

今後音楽作品は、殆ど消費財のような使われ方をするだろう。消費財からの脱却は、今のところ生身と芸を見せるライブで対抗するしかない。
デジタル化による音源の消費財化は弊害だが、音楽は原点に戻っているとも言える。

ネット配信による広告収入を期待する向きもあるが、これで食うためには日々アクセスを大量に得られる企画を生み出し、送り続けなければならない。これがどれ程大変かはやってみれば分かるし現実的には不可能だ。

結局完全な個性と価値はライブに集約し、まともに唄えない歌手やミュージシャン崩れはファンタジーの想像と提供をすることが条件となるだろう。

メジャーであろうがローカルであろうが、「芸」で飯を食うのは非常に高度な能力と生き残りのための戦略が必要だ。ネット社会になって、自分の作品を他人の目に触れさせる事が容易になった時代だからこそ、偽物は消費すらされずに消えて行くだろう。
芸をマネタイズするためには、まず本物の芸力が必要だ。20代でこれを読んでいる方にはピンと来ないかもしれないが、30年から40年を自分の芸力によって支えて生きて行くというのは、実際尋常な事ではない。我々が普段テレビやメディアを通じて知っている有名ミュージシャンというのは、実は非常に稀な才能の集団なのだ。
自分自身にその力があるかどうかは、経験と反応によって確かめて行くしかない。地元に住んで活動している場合、殆どが完全な経済的自立をしていないため、自ら辞めるという判断に行きつき難い。

「自分の才能に気がつくのも才能の内」と言われた事があるが、まさにその通りだと思っている。
20
代中盤までにデビューし、売れないまま契約終了となり、それでも音楽活動を続けている人々は意外な程多い。彼らの生活実態を統計的に計測したデータが無いので、正確なコメントが出来ないが、同世代のサラリーマン所得を上回っている人たちは殆ど皆無だろう。
音楽は麻薬と似ている。音楽は余りにも素晴らしい。音楽の麻薬による魔法が解けないまま人生を台無しにする人も多い。私の周囲にもそういう人は多い。でもその魔法を解く事が出来るのは自分自身だけなのだ。サラリーマンをやりながらでもリッチが音楽生活を満喫できる道もある。
プロミュージシャンの道というのは、本当に特別な才能を持続出来る人のみに与えられたものなのだ。また、かなりのレベル才能を持った人でも、40歳代を迎えて活動が厳しくなる人が多く出てくる。私は、自分の理想と現実のギャップに苦しみ、逃れるように酒を煽り、50歳を目の前に亡くなった人も知っている。天才と謳われた宇多田ひかるも、いつの間にか活動が停止しているし(2016年やっと再開)、サザンやミスチルほどでも、数年を1サイクルにするような活動に変化する。(桑田さんはずっと走り続けているが・・・)
一流スタジオミュージシャンと言われる人たちでも、狭い需要をせめぎ合う。だから、自分の立ち位置を自覚出来るかどうかも才能の内ということなのだ。

ミュージシャンに憧れている人たちは、この職業が命を削るほど過酷だと覚悟した上で、挑戦して欲しいと思う次第なのだ。

 

最近このようなブログ記事を読む機会があった。私にはちょっと複雑な気持ちがよぎった。それは職業ミュージシャンって奨学金を与えて育成する存在なのだろうか?ということだ。もし仮にそういうシステムを是とするにしても、それはかなり才能を選別された人たちへの援助であった方が良いだろうということだ。もちろん選別の裾野を広げるためにあえて奨学金というチャンスを与える方がいいという考え方もあるが、この辺りはちょっと難しい問題だなあ・・と感じた。と同時に現在のミュージシャンとはそういう事でもしないと生まれないほど産業構造が縮小し、魅力がなくなってしまっているとも言えるのかもしれない。レコード会社や映画会社に若い才能が入って来なくなったと聞くが、縮小産業に若い人が人生を掛けるはずもなく、それによって才能が出る確率が下がるのは悲しいが、もはや止めようがないもの事実だろう。やはりロック、ポップミュージックにとっては、80年代前半までが最高の時代だったと言えるかもしれない。

 

http://blog.livedoor.jp/monday_friday/archives/66316356.html 

 

 

プロミュージシャンになる方法と生活:

http://okguide.okwave.jp/guides/52856

元プロミュージシャンの実態を語ったもの:

http://badcat3547.blog35.fc2.com/blog-entry-23.html


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hana

http://badcat3547.blog35.fc2.com/
上記のURLはもう存在しません。
せっかくこのブログでご紹介頂いた私の書いたブログですが
先日引越しをしました。
新しい移転先は上記のURL欄です。

またこの記事でご紹介頂いた記事のURLは以下です。
http://blog.livedoor.jp/hana_1115/archives/9210217.html

こちらのブログも楽しく読んでいます。
ヨロシタ・・・ありましたね。懐かしいです。
by hana (2018-05-13 22:11) 

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