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Queen “Bohemian Rhapsody”のサウンドの秘密を探る Part-4 [音楽に関わるブログ]

当時のロックフィールドスタジオでのリズムセクションのレコーディングの様子は、ロジャーとブライアン・メイが語る所によれば、レコーディングブースの中央にフレディーが演奏するピアノがあり、その周囲に他のメンバーが陣取っていたようだ。当時のロックフィールドスタジオにはドラム用のアイソレイションブース(ドラムを個別の部屋に入れて演奏・録音する場所)がなく、バンド全員が一つの大きなブースの中で演奏していたという。また当時ブラインアンが使っていたVOXのアンプは3台だったようだ。

Rockfield (2).jpg

ロックフィールドスタジオの演奏ブース内部の様子


ベイカーは続ける。
「我々は、後で使う事が可能になるように、マスターテープの最後の部分を30秒間残してマークしたんだ。また、知らない間にテープが行き過ぎないようにする意味もあった。そして曲の最後の部分になるロック・セクションは、当時我々がラウドロックのナンバーを録音していたような方法で別曲として録音作業した。事を複雑にし始めたのは、曲の後半部分においても多くのヴォーカルパート(the 'Ooh yeah, ooh yeah')があったことだ。そこでまずピアノ、ギター、ベース、ドラムのベーシックを録音した後、リード・ヴォーカルなしで、バックのコーラスを録音したんだ。こうした方法は異例だった。
ピアノはスタジオブースのセンターに他の楽器に囲まれるようにセットされていたため、リズム録音の際、ピアノのマイクに他の楽器が被るのを避けられなかった。だから少しでもその影響を少なくするためにピアノの周りを布で覆って録音したよ。
通常リード・ボーカルを入れてからバッキングボーカルを録音するのだが、それはリード・ヴォーカルがバッキングボーカルの方向性に強い影響を与えるからなんだ。でもバッキング・ボーカルを録音するために十分な空きトラック数を確保するのが困難だったため、先にコーラスを録音するという方法を取らざるを得なかった。
オペラ・セクションは、考えていた以上に長くなったため、テープの継ぎ接ぎを繰り返してテープリールに乗せ換えていた。

フレディーが新たな“ガリレオ”を思いつく度、私は新たなテープをテープリールに乗せ換えなければならなかったが、そうこうしている内に、周辺が切り貼りしたテープで埋まり、最新機器の前をシマウマが通り過ぎているような状況になったよ。こうした状況は我々がオペラ・セクションをどの程度の尺にするかを決定するまで、34日間ほど続いたね。そして結果的にはオペラ・セクションだけのレコーディングに3週間かかった。1975年当時、これだけの期間があればアルバム1枚が完成したもんだよ。」

thomas baker.jpg

QUEENの初期のプロデューサーであるトーマス・ベイカー

 
さらにベイカーは続ける。

「我々は3声のハーモニーを作るのに、1声を何回かダビングして1本にまとめることで作った。だから、コーラスの最初のパートの音符(注:1声分)を3トラックに(注:ユニゾンで)録音し、それを1トラックにまとめるんだ。2番目のパートの音符も同様に3トラックを録音し、それを1トラックまとめ、3番目のパートの音符も同様に行う。すると全部で3声分(注:計3トラック使用)の録音が終わると、今度はそれらを3声を1トラックにまとめるんだ。
つまり3声(注:3和声で計9声分の音)のハーモニーがたった1トラックにまとまることになる。

我々は同様の方法で、それぞれのバックグラウンドヴォーカルの作業を曲全体に渡って行い、1つのパートを完成させるまでに、オリジナルの録音から数えて4回(に渡って別のトラックにコピーをすることで)、音のジェネレーションを落とすことになった。
我々が他の2つのパートをミックスして1つにし終わるまでには、最初に録音したパートから見ると、8世代もジェネレーションを落とす(注:つまり音質も落ちるという意味)ことになった。これは我々が作業の繰り返しによってマスターテープの磁気をすり減らすことに危機感を抱き、スコッチ社製の2インチ幅のオリジナルの24チャンネルテープを、サブマスターとなる別の24チャンネルテープにコピーを始める前の話なんだ。一度でもこうした事が起こると、ヴォーカルが歪む要素が非常に高くなるからね。」

前代未聞のレコーディング・プロジェクトではあったが、ベイカーの立場からすると無用とも言える心配の種に囲まれていた。実際、彼にとって時代を背景とする技術的な限界はどうでもいいことだった。

「もし何らかの理由で尺が伸びたとしたら、我々はただ単にテープを付け加えるだけだった。もし録音するトラック数がもっと必要なら、同じテープの空きトラックに音をまとめてバウンス(トラックから別のトラックへの音のコピー)しただろう。Bohemian Rhapsodyの録音の実態とは、トラック間のコピーの連続だったんだよ。」

実は80年代、レコーディング業界内では、本作のレコーディング方法の噂の中で、24チャンネルのマルチトラックレコーダーを10台ほど接続し、同期させてレコーディングしていたと云う節があり有力だったが、この証言を見る限り噂が誤りであることが明らかになった。

つづく

Part-5は以下:
https://skjmmsk.blog.so-net.ne.jp/2013-04-19-3 


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