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Queen “Bohemian Rhapsody”のサウンドの秘密を探る Part-1 [音楽に関わるブログ]



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Queen
Bohemian Rhapsody(ボヘミアン・ラプソディは言わずと知れたロック史に残る名曲だ。1975年に突然この世に現れた本楽曲について、あの当時を生きてきた人間はそれを当然知っているが、全く知らない世代にはこの曲がどんな意味を持つのか全くピンと来ないだろう。当時16歳だった私は、この曲をニッポン放送のオールナイトニッポンで初めて聴いた。6分近い曲を全て放送したからだ。当時、ラジオで音楽のオンエアーは、良くて1コーラスが常識だった時代に、全尺を放送するのは画期的な行為だった。
そしてティーンだった私はこの曲を聴き終わり、こんな凄い曲とサウンドを考え付くだけでなく、実際に作り上げる人間がいることに驚愕した。

これから23,000字ほどを費やして正にモンスターと形容してもいい
Bohemian Rhapsody”の制作過程を語るつもりだ。

2018年11月、日本でこのタイトルが付いた映画が公開された。我々のような世代の人間には今から楽しみだが、予告編にもこの作品のレコーディング風景が現れる。おまけにこの映画、日本では世代を超えたヒットになっており、上映週につれて動員が増えているという異例の状況となっている。2019年1月の段階で115億円の興行収入を突破し近年最大のヒット映画となったことは、同じ世代を生きたロックファンとしても誇らしい。

「映画:ボヘミアン・ラプソディ(ラプソディーじゃないのでご注意を)」
http://www.foxmovies-jp.com/bohemianrhapsody/


さて、本記事はかなり長い。
それ故いくつかのパートに分けてアップするつもりだ。

私のQueenの実体験は、1981年2月の武道館5連続公演の最終日だ。
実は観客としてではなく、警備のバイトで会場にいた。当時大学生だった。
何の幸運か、配置された場所はアリーナのど真ん中。
現在のように警備員としての態度がそれほど厳しい時代ではなかったので、ずっとセンターで舞台に顔を向けながら観客の様子を確認していた。
しかしやはり舞台に自然に目が行くのは人間の弱いところ。
特にフレディーの圧倒的な歌唱とパフォーマンス、またバンドの怒涛のサウンドに触れ、QUEENってこんなに凄いバンドだったっけ?と思うほどだった。
当然終盤に“Bohemian Rhapsody”を演奏したのだが、この曲は大好きだったので仕事を忘れて聴き入ってしまっていた。フレディーの歌もメンバーの演奏も本当に凄かった。
尚、ライブも終わりかけのある曲で、フレディーが舞台からステージで自分が使っているガラスのコップをアリーナ中央に向かって投げ入れたのだ。
コップは私に向かって真正面に飛んできて目の前に落ち、粉々になってしまった。そこに女性客が押し寄せたために、観客の女性の1人が手首に大きな傷を負ってしまった。
私は彼女を楽屋口に移動させ、他のスタッフが救急車を呼んだ。
事が終わった頃にはライブは終わっており、私たちアルバイトは、舞台撤収の手伝いをした。フレディーが使ったピアノの左手前には、映画でも登場するモニター調整用のボックスが設置してあったし、プライアンのVOXのアンプを運びながら、感傷に浸ったものだった。

実はこの時、バンドの通訳アシスタントとして働いていた女性がいるのだが、彼女自身が大のQUEENファンだった。
何の運かその後、フレディーから来日の度に指名される指名通訳者になる。(1980年代、劇団四季の公演をお忍びで来日して見に来ていたのをFRIDAYにすっぱ抜かれた時も彼女は通訳として同行していた)。

私は彼女と1987年、とある音楽イベントの仕事を通じて知り合い、その後QUEENの話をたくさん聞いていたので、今回の映画を見ながら色々な思いを馳せた次第だ。
印象的な話の1つに、ある時期のフレディーは、本番直前の楽屋からステージに移動する際、彼が歩く通路の視界に男性がいてはならない(メンバーは除く)というルールがあったらしい。またステージ上ではマッチョに見えるが、プライベートでは女性のように繊細な人物でだったとも語っていた。

さて、人見知りの私にしては珍しく、彼女との友人関係は長く続き、還暦近くなってもロック系コンサートは彼女と行くことが多い。現在でも洋楽CDやインタビューの翻訳をやっているが、様々なロックミュージシャンと仕事をしてきた彼女や彼女の通訳仲間の話は、いつ聞いても「凄い」エピソードばかりで関心する。


話を元に戻すが、もしQueen
Bohemian Rhapsody”を知らないのであれば、音質はともかく一度、以下のURLにアクセスして自分自身で曲を確かめてからその先を読んで頂いたほうがいいかもしれない。当時も現代においても、ロックの範疇の中でも異端とされるこの楽曲が一筋縄ではないことが理解できるはずだからだ。
またこのYOU TUBEの映像は、当時の映像をアップしたものとみられるが、音楽史上初のミュージックビデオとも言われている。

https://www.youtube.com/watch?v=fJ9rUzIMcZQ


上記映像の監督のブルース・ギャワーズ(Bruce Gowers)は本作(ボヘミアン・ラプソディーのプロモ映像)の映像監督を任された人物だ。彼の人生はこの映像制作によって歴史に残ることになった。当時を振り返って彼は語っている。

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ブルース・ギャワーズ(Bruce Gowers


「当時はプロモーションビデオという言葉はなくて、ポッププロモって呼んでいたんだ。制作過程におけるミーティングでもバンド全員の意見が集約されていたが、やはりリーダーは彼(フレディー)だったよね。当日スタジオに行くと撮影の準備は万端だった。確か撮影開始時間は夜の715分位じゃなかったかな。撮影時間はだいたい45時間程度だっただろうか。
(注:実際は4時間と言われている)
あと、映像の途中でフレディーの顔が何重にも流れたように見える映像イフェクトは、セカンドカメラを使った映像のフィードバック効果を利用したものなんだ。」


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ブライアンもビデオ撮影時についてコメントをしている。

「当時の我々はビデオ映像のイメージがあって、QUEENⅡのジャケットカバー写真を動画的に映像化したいと思っていたんだよ。仮編集が上がってから見たんだけど、最初は不思議な感覚だったが悪くないなと感じていたよ。」

queen[Ⅱ].jpg

QUEENⅡのジャケット写真はミック・ロック(Mick Rock)という写真家に撮影されたもので、写真の発想の源はマレーネ・デートリッヒの類似したポーズの白黒写真でそれをフレディーに見せたことだった。フレディーは写真を見たとたんに写真を気に入りそれで決まりだったという。

デートリッヒ.jpg


当時の撮影助監督ジム・マカッチオンが振り返る。
「当時メンバーはツアーのリハ中だったんだ。そこでリハが出来て撮影もできる場所として適当だったのは映画が撮影できるようなサウンドステージ(彼はこれを飛行場の駐機場のハンガーのような場所だと言っている)だったんだ。バンドのスタッフがステージを作り照明もセットしそこで撮影することになったのさ。」

撮影時の照明はバックライトとトップライトを組み合わせたシンプルなものだった。スモークを焚き、準備が整うと音楽を流し、メンバーそれぞれがビデオで見るような位置に陣取って座り、リップシンクでカメラに収まった。

撮影カメラマンのラリー・ドッドも振り返る。
「メンバーの顔を上向きにしてライトが当たるようにし、カメラは正面から捉えたんだ。撮影は大きなステージ上のほんの小さな区画だけで撮影した。基本的にはライブのリハ用に設置された場所だったからね。また1つ画面に複数のメンバーの映像が収まって見えるのは、特殊なレンズを使ったからでカメラの前に置くだけであの多重画像の効果が得られたんだ。」
ロジャーはコメントを付け加えてくれた。
「当時ではあれでも“特殊効果”だったんだよ。今じゃ考えられないレベルだがね。」

当時Queenは、レコーディング後にツアーを控えていたが、Bohemian Rhapsody”のオペラセクションをライブ演奏で完全に再現することは不可能だったため、ライブではその部分を音声付のビデオ映像と入れ替えるライブとシンクロして演出をして表現手段を取っていた。(日本での公演も同じ演出方法だった。)

当時としては信じられないような録音テクニックを使ってあの重厚で複雑なサウンドを構築したメンバーの創造性と実現性は現代になっても色褪せない。
私は1981年のQueenの武道館コンサートにおいて、上記のような演出の
Bohemian Rhapsody”のライブ演奏を見る機会に恵まれた。冒頭のコーラスが終わるとフレディーがピアノを演奏しながらエレガントに唄いだし、オペラセクションではテープに切り替わりながらもライブ演奏とシンクロし、ロックセクションからはフレディーがマイクを持って唄い始め、爆発したような演奏変化するのだ。この世にこんな凄い楽曲と歌の上手いヴォーカリストが存在するのかと目を疑うような驚くべきパフォーマンスだった。

(ウェンブリーアリーナでのライブ映像)
https://www.youtube.com/watch?v=oozJH6jSr2U


つづく


Part-2はこちら:
https://skjmmsk.blog.so-net.ne.jp/2013-04-19 

 


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