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原田真二氏 浜離宮朝日ホール 2012年8月10日 [ライブ・コンサート]

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久しぶりに彼のソロ・ライブに出かけた。19791226日の日本武道館以来だから33年振りだ。当時の武道館にこだましていた80デシベル(鉄道の陸橋の真下以上の音圧)は超えるんじゃないかという女性たちに歓声の中で演奏をしていた彼の姿は今でも記憶に鮮明だ。歓声が大きすぎてアリーナ後方中央だった私には演奏が良く聞こえなかった記憶がある。

彼と私は年齢が1つしか違わない。彼の方が上だ。デビュー当時の3枚の衝撃的な楽曲センスは腰を抜かすほど私に衝撃を与えた。フォーク系の音楽やアメリカのポップソングに明け暮れていた私には、洋楽のような曲を書いて歌って演奏する同年代が日本には居るんだという事実に衝撃を受けたのだった。
80
年代中期まではアルバム、シングルは全部買って聞いていた。しかし大学を卒業し私自身が音楽業界で働くようになると、私の私生活の余りの忙しさで彼の活動を捕捉することが難しくなり次第に彼の音楽は疎遠になった。
当時私はシンセブログラマーのアシスタントで、自分の師匠が原田真二氏からの仕事を依頼された事があった。しかしサザンのKAMAKURAのレコーディングスケジュールが予想を超える延長があり断ったのだが、仮にレコーディング作業に入っていたら彼の音楽作りを見る機会に恵まれたかもしれないと思うと残念だ。

今回改めてライブに出掛けるきっかけになったのは、20121月の渋谷で開催された東日本チャリティーライブで彼の演奏する姿を久しぶりに見たことだった。デビュー当時、高い音楽性を持ちながらアイドル扱いされていたことに必死に抵抗していた頃に比べ、妙なトゲが無くなり、自然体で音楽を伝える姿が印象的だったからだ。しかし私の周辺の音楽業界男性関係者には彼の信奉者が多かった。
残念ながら現在の彼は、かつてのように武道館を一杯にするような集客力は無い。
80年代中盤から目立ったヒット作品も無くなり、裾野のファンが減った事が影響しているだろう。それでも彼は逞しくも生存が難しい音楽業界を泳いでデビュー35年を迎えた。今日の活動の過程では様々な事に遭遇しただろう。そうした事が様々に彼の糧となっただろう現在の音楽表現は、同世代の人間として、また同じ業界人だった人間として誇らしく見えた。

浜離宮朝日ホールに詰めかけていたファンはやはり女性が多かった。意外にも30代~40代前半の女性が多く、おまけに女性たちは全般的に奇麗で清楚な人が多かった印象がある。今でもそういうファンを集める彼が少し羨ましくも感じた。
自分よりかなり若い彼女たちが原田真二というアーティストの音楽にどのように触れ、コンサートにまで足を運ぶ事になったのかは非常に興味深い。どう考えてもリアルタイムのファンじゃなさそうだからだ。

嘗ての武道館のように絶叫するファンはおらず、大人し目だったこともあり、原田さんからは“もっと盛り上がって行きましょう”と発破をかけられるような感じだった。キャンディーの合間に“真二”とコールされることに嫌悪感を持っていた彼も、現在では率先してそれを受け入れるようになった。そんな間口の広がりも年齢を重ねた自分の中に重なるものがある。

バンドによるライブ演奏で「サウザントナイツ」「タイムトラベル」を聞いたのが初めてだったので、心躍る時間だった。特にフルコンのピアノで演奏する彼の姿はやはり素敵だ。「タイムトラベル」は大学にあったピアノで暗譜出来る位コピーしていたので感激がひとしおだった。
彼はピアノだけでなくギターも上手く、日本人アーティストにしては珍しく複数の楽器をこなし演奏し、歌う事が出来る才能豊かな人物だ。


往事より彼の詞には博愛的な内容の作品が多い。「OUR SONG」や「MARCH」を聞くと現在の彼が東日本大震災の被災地への支援活動を継続していることに頷ける。

これを書いている日はくしくも86日だ。広島に原爆が投下され67回目の「原爆の日」を迎えた。戦争という異常環境下とは言え、十字軍よろしくキリスト教思想下のアメリカが民間人を10万人も殺戮し、戦勝国故にその犯罪を断罪されぬままなのは、勝てば官軍とは言え、言い知れぬモノがこみ上げる。皮肉な事に私はその国の音楽や映画を愛し憧れる人間になってしまった。しかし以前に比べアメリカには冷静な距離感を持って見ている自分もいる。

原田真二氏は広島生まれだ。彼のかつてのインタビューに広島が原爆投下地であったことが人生観や音楽に少なからず影響を与えていた事は兼ねてから伝えられている。

ここ
最近(2012年現在)私は若い頃、時間や金がなくて見る事が出来なかったアーティストのコンサートに出来るだけ通うようにしている。日本人では八神純子さん、井上陽水さんなど、海外勢では、YESASIA、バートバカラック、ホール&オーツ、トレヴァーホーン、ドナルド・フェイゲン、シンディー・ローパーなどだ。特に海外勢の殆どは60才を超え、現役として見る事が出来るパフォーマンスを維持出来る限界が来ているためだ。あと10年もしたら、私が親しんだアーティストの殆どは現役としてのライブ活動等もかなり制限されるだろう。ストーンズやマッカートニーなどの世界ツアー敢行は例外に近い所業だ。

ネットもコンビニもfacebookも携帯電話も無かった時代に育ったが、こうした華々しいアーティストたちのお陰で豊かな音楽ライフを過ごす事が出来たと思っている。またそうしたアーティストが若かった私を音楽業界に向かわせたとも言える。

原田真二氏は201211月1日にも有楽町の国際フォーラムCでライブがある。早速チケットを買おうとしたが、同日に開催される別のコンサートのチケットを買ってしまっていたので残念だが今回は行けそうにない。


原田真二 35th Anniversary BOX(DVD付)だが長らく絶版だった彼の二枚目のアルバム

「Natural High」などをおさめたCD-BOXは買った。「Natural High」は洋楽嗜好過ぎて一般ユーザーを掴めなかったが、私は好きなアルバムで「Something New」などの名曲が収録されている。彼のレコードアーティストとしてはこの2枚目がピークの1つになった。「タイムトラベル」などのシングルヒットもちょっと洋楽要素が強くなるにつれて初期ほどのインパクトを与えられず、売上が下がっていった。でも個人的にはこの辺りの彼の音楽が好きだ。80年代に入るとサウンド指向が強くなり、彼のメロディーメーカーとしての強みは消えて行き、当時の流行りのサウンドで満たされてしまうようになった。


私も結構いい年齢の大人になり、彼の才能に改めて関心をしながらも、80年代を乗り切れなかった辺りに悲しい気持ちを感じたりした。今後も自分の身の丈の範囲で私の青春を輝かしてくれたアーティストたちの活動を見守る事が出来たらと思う次第だ。



追伸:

2013年3月29日の国際フォーラムCでのライブに出かける。昨年行けなかったので楽しみにしていった。
残念ながら3階席には人影がなく、動員は1100名程度(満席で1500名)だったろう。ステージは浜離宮ホール時よりも力が入っていて、コーラス3名、サックス1名、パーカッション1名(三沢またろう氏)がいつものフォーリズムに加わった編成だった。オープニングのダンスをやっている時にズボンのお尻が破れるアクシデントがあり本人が慌てた部分はご愛敬だったが、熱の入ったライブだった。観客の90%は女性で、かなり常連によって固められた感じがした。
原田真二さんは音楽業界でも彼の同年代にはファンの多い人物だが、観客に男性が総体的に少ない理由は今回何となく理解できるような部分があった。
本来的に言えば、原田氏は完全な洋楽ロック指向のミュージシャンだ。デビューの経緯やマスコミの取り扱われ方やその後のファンの在り方で原田氏も色々とスタイルを変化させ対応してきたのだと思う。それは彼の生き残りに重要なファクターだったろう。
私は原田氏を応援しているので、何度かライブ見た上で、あえて私なりの男性集客増に関する提言をしてみたい。

やはりもう少し男性客を取り戻すライブ内容に回帰すべきと思う。
マーケットには男女があり、現在女性のかなり支持は大きいのだが、会場に男性客が増えて来ない点や東京で1000人前後の集客から拡がらないのにはキチンと理由があるはずだ。
これは長年彼の活動を支えている女性ファンをないがしろにするという意味ではない。今のスタイルにもう少し手を加えたライブにすれば男性客も戻るはずじゃないだろうか?という意味だ。非常に個人的な意見だが具体的方法は以下だ。

(1)余り観客を巻き込んだようなステージ演出を控え、もう少し演奏そのものに特化した演出に変える。これは女性客には多少反発されるかもしれないが、個人的にはもっと演奏そのものを聞きたいし集中したいし、もう少しクールな感じでも良いと思う。

(2)彼の代表曲とも言える3曲は、ライブ演奏者の構成に無理のない範囲でオリジナルに近いアレンジをベースにしたライブアレンジで行う方がいいかと感じた。オリジナルのアレンジの演奏は演奏者が飽きてしまっていると感じますが、やはりヒット曲にはそれなりの理由があり、アレンジは非常に大きなファクターです。ホテルカルフォルニアのソロギターをファンの全員が完全に歌えるように、名曲のアレンジは全て理解し記憶されているものなので、その点を勘案して頂きたいものでございます。

(3)ロックナンバーを増やし、もう少し尖った感じで構成する。

(4)シャドーボクサー辺りは転調後の唄がかなりキツクなっていると聞こえるが、ボイトレで何とかボーカルの対応方法を改善して頂きたい。今回の演奏ではイントロがサックスでオリジナルに近いアレンジを再現しており感動したが、転調後の唄を割り引いて聞かなければならないのはちょっと残念だった。

(5)サポートメンバーを増やすならまずギターリストを増やす事を考えて欲しい。
正直今回のツアーではもう一人ギターリストが居れば演奏やアレンジ、音像の幅も広がったと思う。当事者には大変に申し訳ないがパーカッションは不要だったと思うし、サックスも全体の30%程度しか登場しておらず、彼女がギターも弾けたら最高だったなあと思って見ていた。全編通じて中域の音像を確保できるミュージシャンを欠いた事で音圧にちょっと物足りない部分があった点は否めない。またPA的にもその辺りを補完出来ていないようにも感じた。

(6)ドラマーのリュウベン氏には、出来ればもう少し強めのリズムを出すように演奏して頂き、またもう少し低音の出るバスドラに変えてもらった上で、スネアのピッチも若干下げ、チューニングを中域に確保してもらうようにお願いした方がいいと思います。やはりロックナンバーでリズムが弱いのは心にグッと来ません。強いリズムに美しいメロディーを信条とする彼の音楽に対して、金属的な音のするピッチの高いスネアはハイハットの音域と干渉してしまいがちです。またリズムの強さはどちらかと言えばスネアの中域周辺なので、ここら辺をもう少しガツっと出せればもっと素敵だなあと感じました。これは演奏方法とスネアの選択だけで解決できる問題です。
ベースは綺麗な低音を確保しているのだが、バスドラとのピッチ感がかい離しており、本来の低域がちょっと寂しいため、ロックの曲でもリズム感が前に出にくく、いわゆる「ガツン」と来ないのです。
これはPAが理由かもしれない部分もあるので、今後の研究を期待しております。

 

(7)原田さんのギターはもう少しリバーブを減らしておいた方が良いです。現在のような感じですと、ギターの演奏している際のフレーズや音が、会場のエコー感と混ざって殆ど消えてしまうためです。ベースとの掛け合いでもベースは綺麗に聞こえるのにギターは遠くて良く分からなかったのにはフラストレーションが溜まりました。


さて、2017年7月になり、原田さんは40周年記念のシングルコレクションを発売することが発表されました。

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 内容は、「ていーんず ぶるーす」「キャンディ」「シャドー・ボクサー」から始まり歴代のシングルをレコード会社の垣根を超えて集めたものです。収録曲を眺めてみると、私が聴いていたのは、「MODERN VISION」辺りまでだったな・・・と分かります。80年代に入った原田さんの曲作りは、メロディーの存在が弱くなり、サウンドに埋もれてしまいました。また当時のデジタルシンセやサンプラーを駆使し過ぎてしまったため、楽曲の流行り廃りが明確になり過ぎてしまい、時代の洗礼を受けるという副作用もありました。洋楽嗜好が強かった彼の曲と編曲への取り組みは挑戦的だったと評価しているのですが、日本のマーケットでは地位が分かり難い存在になった部分がありました。どうやらこのシングルコレクションと共にロングツアーをするようなので頑張って欲しいと思います。

さて、色々と大変に生意気な意見だというのは重々承知なのですが、少しでも原田さんのファンが増え、コンサートに足を運んで頂きたいという老婆心からのものであります。昔の仕事柄なのか、批判的というのはなく、もっとこうなったら客の心を掴むのになあ・・・というマネージャーにも似た心理が働いてしまいます。
こうした細かい事を見聞きながら会場でライブ見ているヘンテコリンなファンもいると、どうかお察しくださいませ。説教臭い点はご容赦を。


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ごく最近、原田真二さんのライブを体感し、ステージ上の原田さんのパフォーマンスに感激してライブに通いつめてます。

でも、原田さん自身にはただただ感動しているのですが、ひとたび目をそらすとライブの会場の雰囲気にはなじめないのです。
熱い激しいライブとは裏腹の会場ののりに、、、たじろぐ&気を遣う

まさに仰っている通りで、もっと会場を巻き込むパフォーマンスは控えてもらって、とんがった演奏をしてもらえたら嬉しいです。先日はじめてバンドライブを体感したのですが、acousticとなんらかわらず、、、、原田さんの激しいエネルギッシュなパフォーマンスが最高なのですが、ドラムのたたきが弱く、ベースも弱く、コーラスもパンチなく、周りのすべてが存在感なく、バンドである必要がないかも、、、と思いました。
かっこいいバンドライブ体験したいです。

ご機会あれば、是非、原田さんにご助言していただけたらと願います。
by お名前(必須) (2017-06-21 14:21) 

コロン

参考になるコメントを頂き恐縮です。
原田さんは才能のある方なので頑張って欲しいとは思ってますが、彼を取り巻く環境は、なかなかそれを許さない部分があるのかな?と推察したりもしております。来場者のかなりの部分は固定ファンの方で、多分原田さんを長い間支えている方々だろうと推察致します。
ファンが固定化し、流動化しないため、どうしても古いファンに向けたライブになりがちなのだろうと思います。私は原田さんを生粋のロックンローラーだと思ってますが、環境はアイドル的な部分を求めているのかもしれません。
私のように久々に顔を出すような流れ者の人間、また特に男性にとっては、どうしても音楽面に集中するので、サウンドの作りに厳しい耳を持ってしまいます。バンドのメンバーは原田さんと長いお付き合いを経ているように推察しますが、ちょっと慣れが生じているかな?という感じがします。本当は彼ほどの才能があればファンが過去のファンを取り込めると思いますが、そうなっていないのは、純粋に音楽の部分に対して流動性のある観客が固定しない理由があるのだろうと思います。少なくとも私が同時代以前からファンである達郎さんや陽水さんは近年になっても観客が減る処か増えてチケットが取れないミュージシャンですから、そういう意味で、これが現在のマーケットの回答なのだろうと思います。残念なのですが・・・。でも私は地道に応援をしております・・。はい。
by コロン (2017-06-22 10:11) 

お名前(必須)

読み応えのあるご返答いただいていたのですね。
ありがとうございます!

この時からも、原田さんのライブに足を運んでおります。
原田さんのライブが好きに変わりなく。

ですが、こちらの記事を読んでからというもの、

重低音の音しかり、がっつり鳴り響く、あの音この音につられ、とらわれて聴いてしまうロックが好きなので、バンドライブの時は毎回、私が今まで足を運んできたバンドメンバーで原田さんが歌ってくれたらという思いが頭によぎります、、、、

つい先日、 最初の武道館ライブバージョンと思われるてぃーんずブルース1曲だけですが若い即席メンバーで演られました。
これぞ!!と思いました。これなんです。求めている原田真二さんのロックは!と。

今日は、もしや?! 先日発売になったPRESENCE聴かれて感想述べられてないかな?と思ってこちらを訪れ、コメントに返答してくださってるのを知りました。改めてありがとうございます。

原田さんが、声強く、今度のPRESENCEは相当ROCKでいいとおっしゃってたので、期待いっぱいできいたのですが、

悲しいくらいがっかりしてしまって。
がっつりROCKがききたかったのに。

小さなライブハウスで色々と社会で偉業をなし終えた落ち着いた、60代の素敵なおじ様たちのバンドの音色みたいなかんじで。
その上、原田さんの歌い方にもサプライズがなく、
うまく表現できないのですが、ここの歌い方とかここの音色が好きとかいうお気に入り箇所が全然登場しなかったんです。

必死で買いそろえたCDには何かしらそんな、ニッチな好所があったのですが、、、今回はなかった。

そういえば、陽水さんは、島でライブをしたときに、もちろんチケットは発売共に完売で、箱も島でいちばん大きな箱を用意し、その島ではいまでかつてなかった車の渋滞がおこり、ホテルや宿が満員御礼になったと聞いたことがあります。テレビではお見かけしませんが、、、すごいですね。


by お名前(必須) (2017-10-31 18:00) 

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