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佐村河内守氏のゴーストライター問題を私なりに考えてみた・・・。 [音楽に関わるブログ]

佐村河内守氏のゴーストライター問題

 

201425日の朝7時のNHKラジオニュースの最初の一報は驚くべきものだった。聴覚障害者の作曲家である佐村河内守氏が過去18年間ゴーストライターを使っていたことが判明したのだ。
更にこの問題は、木曜発売の週刊文春でスクープされることが引き金になって公表された事も分かってきた。

私の知り合いの元音楽業界人は、“ゴーストライターが作曲した作品を自分のものとして発表することそのものを、悪いこととは思わない。そんなことを言ったら本屋にある大多数の本はどうなるのだろう。

 「別の音楽家にイメージを伝えて作曲してもらうことを十数年にわたって続けていた。このことを深く反省している」という。そこを反省する必要もないように思う。 要はマネジメント(ママ)の問題だったのだ。”と語っていた。


彼の意見には確かに一理あると思う。善悪だけで線引き出来ない難しい部分があるのも事実だし、この問題の複雑な点はそこにある。
しかし私は別の意見を持っているので以下に要約する。

 

(1)私には佐村河内守氏が何故以下の方法を使って仕事をしなかったのかが全く理解出来ない部分なのだが、仮に佐村河内守氏が最低限度のメロディーだけを作りだせる能力があったのなら、共同作家に曲のイメージを伝えてオーケストレーターにアレンジしてもらえばよかっただけだったのだ。アメリカの映画音楽の作家だって譜面が読めないが打ち込みでメロを書き、あとはイメージを伝えて全部オーケストレーターにアレンジさせて自分の名前をクレジットするというのは極めて普通の行為なのだ。ただし、佐村河内守氏がメロディーを全く紡げないとしたら話はかなりややこしい。

(2)言い方は悪いが、こういう方法で活動するなら、墓場まで持って行く覚悟で慎重に活動すべきだった。

(3)本来は聴覚障害者である事を活動の売りにすべきでなかった。

(4)共同作業を隠して仕事をするのならNスペなどに出演したり、著書を出したり災害地、被災地のようなセンシティブなテーマの仕事をすべきでなかったし、マスコミに登場すべきでもなかった。

(5)本件は本人に帰する問題。マネージメントの関与はあくまでも共犯的なもの。ただマネージメントがマネージ出来なかった点は痛恨。

 

確かに私の知り合いのこの人物が言うように出版業界にゴーストライターが多いのは有名だし事実だ。著作者名とは裏腹に殆どを編集者が書いていたりするものも少なくない。その点を肯定するつもりはない。出版業界のゴーストライター問題はハッキリ言って詐欺行為だ。その点だけに焦点を当てれば、佐村河内守氏の今回の行為は、彼一人に帰するべき問題ではなく、知り合いの意見に同意出来る部分もある。

実際、音楽業界では、表面的にクレジットされている作曲者には実は共同作家がいたりする。実際私は日本でも有名な某ミュージシャンの大ヒット作品に共同作家が居る事実を知っている。しかし彼の名前はJASRACの管理登録名もない。だが裏で出版社と別途印税契約されている事実も知っている。
但し、少なくとも原著作者が作曲、作詞に直接関わった事実はあるのが幸いだったが、これだってちょっと詐欺っぽい臭いがするし、気持ち悪い。佐村河内氏のニュースに触れて、本人は今頃居心地が悪いんじゃなかろうかと想像する。

 

さて上記(1)。これは事実だ。仮に佐村河内氏が譜面に弱くても、現実的にそんな音楽家は数多くいる。吉田拓郎氏だって譜面が読めない。アメリカの著名な映画音楽作家だって譜面が読めないのに雄大な作品を出している人がいる。映画音楽は交響楽で演奏する場合が多いが、別にスコアーを書けなくても作曲家として成立できる。
少なくとも佐村河内氏が主メロディーを紡ぐ事さえでき、それを共同作家に伝える事が出来れば、あとはオーケストレーター(編曲者)に委ねれば良かったのだ。私が不思議なのは、佐村河内氏が何故こんな簡単な手法をやらなかっただろうか?という点だ。
世間は交響楽の作曲家は、作家自身がフルスコアーを書けなければならないと思っているだろうが、実際は違うのだ。
坂本龍一氏の「子猫物語」だって、久石譲氏の「千と千尋の神隠し」だって、曲によっては別のオーケストレーター(編曲者)がやっている。もちろん彼らは主要メロディーを自分自身で作っているし、殆どのオーケストレーションも本人が行っている。
それとも佐村河内氏はメロディーも浮かばないただの凡人だったのか?


(2)は、この問題の本質だ。私の知り合いの言うようにゴーストライターの存在は否定できないが、ハッキリ言って詐欺行為だ。従ってそれを承知でやるのなら、墓場まで持って行く覚悟が必要だ。金の問題、名誉の問題などを共同作業者やマネージメントと握らなければならない。別に不正行為を勧める訳ではないが、世間を騙すのなら徹底的にやるべきだった。だから慎重に仕事をしなくてはならなかったのだがそれに失敗し、週刊誌に書かれる事態を産み、世間に手の内を明かしてしまったのだから単なるマヌケに見えてしまった点が痛恨だった。もし、それに対してのリスクを背負えないと感じていたのなら、当初から絶対にこの話に乗るべきではなかった。影の作家、新垣隆氏によれば、佐村河内氏は自殺するとまで言ったらしいが、自分の人生に相当なリスクを負うような事を頼むヤツには自殺してもらえば良かったと思う。今の現実は予想出来た訳で実際背負えない問題になってきている。今後2人に損害賠償請求が発生し、自己破産し、社会的な抹殺という考えたくない事実が起こるでしょう。場合によっては佐村河内氏が自殺して破滅するかもしれません。でも、事がバレたらそうなる事は考えれば分かったはずなんです。でもやってしまった。であれば回答は1つのはずでしょう。でもそれが破断してしまった。それだけだったのです。

(3)は、世間が一番引っかかった点だろう。罪深い事件だなと思う部分はここだ。実はこの記事をアップした夕方、実際の曲を書いたいたという新垣隆という人物が、佐村河内氏の聴覚障害事実に疑念を唱えたのだ。
仮にこれが事実だとすれば、障害者が障害を乗り越えて、才能によってだけ社会に生きて行く姿は美しく、感動を覚えた庶民は、完全に騙されたという事だ。
当初は障害者が行き詰って起こした事件のようにも見えたが、仮に障害者を装っていたとすれば、この問題の罪深さを一層混迷させてしまったと言える。
仮に障害者であったとしても、障害者であった事を全面に出して活動していた点が、今回の問題に一層の暗い影を落とした。

新垣隆氏の会見記事:
http://blogos.com/article/79742/

(4)は、簡単に言えば、裏でコソコソやらなければならない割には行動が目立ち過ぎた点がまずかったという事だ。誤解を恐れずに言えば、詐欺的な仕事をする割には、余りにも世間の目を引くようなメディアに登場してしまった点が痛すぎる。つまり慎重さに欠けていたという事だ。NHKスペシャルの佐村河内氏の言動を見て振り返ってみると、随分な役者だなあ・・と思うのです。HIROSHIMAもボツ曲の再利用と分かってしまい、もはや恥ずかしさを通り越しているんだが、姑息な事をやっている割には目立ち過ぎた演出をしたのは痛すぎる。もっと静かにやっていれば・・と思わない訳でもない。ただ、分からなければ何をやってもいいと主張しているのではないので誤解なきように。

(5)は、そもそもどんなマネージメント体制だったのか分からないが、いずれにしても詐欺的な仕事をする本質問題は、本人に帰属する。マネージメントが煽ったかもしれないし、知恵を貸したかもしれないが、いずれにしても本人の意思の問題だ。


株式会社サモンプロモーションの公演中止案内:
http://www.samonpromotion.com/jp/info/samuragochi.html

 

幻冬舎文庫:「交響曲第一番」(文庫本)販売停止のお知らせ

http://www.gentosha.co.jp/news/n332.html


日本コロンビアの交響曲第1番 HIROSHIMAの販売中止について
http://columbia.jp/owabi_samuragochi.html

 

 

当初報道を見た知り合いのコメントには、佐村河内氏への応援メッセージまであったが、ピント外れも甚だしい。他でもゴーストライターは当たり前だから佐村河内氏だけが批判の矢面に立つのはおかしいというのは論理の飛躍だろう。見つからなければそれで良いのか?という批判が聞こえそうだが、実際、やるなら墓場まで持って行くべきだった。もし良心の呵責やリスク回避をするならば、最初からやらなければ良かった。
しかし実際にバレた。やるべきでない事をしてバレたのだ。だから徹底的に批判される。当たり前なのだろう。
またバレたことで上記の販売中止など多数の会社やユーザーに迷惑を及ぼした。
これが今回の事件の事実だ。

このように、(1)をクリアーしていれば別に何も問題にならなかった。仮に佐村河内氏がメロディーも書けない音楽家だとしたら、障害の問題を加味しても、他の職業選択をすべきだったろう。障害に苦しんで生きている人は彼だけではない。

「世間は彼の音楽でなく、彼のストーリーに酔いしれていたんだよ」と指摘していたのは坂本龍一氏だ。
この問題の本質はそこに隠れていると思うのは私だけだろうか?

 


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