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2013年3月11日 JOURNEY 日本公演 at 日本武道館 [ライブ・コンサート]

Don't Stop Believe in.jpg

一般的なロックファンのJOURNEYの記憶と云えば1980年代のスティーブ・ペリーがヴォーカリストとして在籍していた時代だろう。彼らの名曲の数々もこの時代にものが多い。このバンドに首尾一貫して在籍していたのはギターのニール・ショーンとベースのロス・ヴァロリーだけで他のパートは全員入れ替わり立ち替わりだ。

JOURNEYというと80年代に登場した西海岸のアメリカン・ロックバンドのイメージが強いが、当初はあのようなポップなメロディーを繰り出すバンドじゃなかった。70年代の彼らはどちらかといえばプログレにカテゴリーされた場所で活動していた。しかし商業的には成功を納めされなかった。

バンドのマネージャーのハービー・ハーバートはバンドの戦略を転換するために自身のバンドのエイリアン・プロジェクトがとん挫していたスティーブ・ペリーを加入させた。その後、1981年にキーボーディストがジョナサン・ケインになってからバンドの風向きがフォローに転ずる。

1981
年から一旦バンドの活動を停止する1986年までがJOURNEYの最初の黄金期だ。その後10年の長きに渡って活動停止していたバンドはスティーブ・ペリーの復帰で再活動を始めようとしたらしいが、体調に不安のあったペリーとメンバーの間でビジネス的な折り合いがつかず、約2年間をもってペリー在籍の時代を終える。

さて、今回来日しているバンドのヴォーカリスト、フィリピン人のアーネル・ピネダが登場するのは2007年だ。

実際、この時代のJOURNEYと言われてもピンとくるものはなかった。実は今回のライブも友人から誘われてニール・ショーンは一度は見ておくか・・という程度の動機だった。
おまけにヴォーカリストがフィリピン人??という感じでもあった。しかし折角行くのならばと、色々と調べてみると、興味深い点も多々出てきた。
特にフィリピン人のアーネル・ピネダの発掘過程は時代というのかYOU TUBE経由だった点や、アーネル・ピネダの歌唱力にも驚かされた。そういえばミス・サイゴンの主役もフィリピン人女優だったからフィリピン人はかなり歌唱力のある人種かもしれない。
いずれにしてアメリカン・ロックバンドのフロント・ヴォーカリストがアジア人だった例をロックヒルトリー的に私は知らない。おまけに歌唱力も抜群となると見たことがない。これはアジア人の一員である我々としては応援に値する稀有な現象だろう。そんな興味も手伝って武道館に足を運ぶ。
今のJOURENYの立ち位置で武道館が埋まるのかどうかを当時担当のディレクターでさえも訝しがったらしいが、実際は予想を超える客入りだった。


それにしても滅多に見ないほどの満席だった。通常よりも席数を増やしていたので1万人以上程度は入っていたかもしれない。最寄りの九段駅にもチケット求むという手書きの看板を掲げた人を数多く見かけたので、東京1回だけの公演はひょっとしたらもう1回は出来たかもしれない。

130312JOURNEY武道館 (1-2).jpg


1848からジョナサン・ケイン(キーボード)の娘であるMadison Cainと、ニール・ショーンの息子であるMiles Schon2人(+サポートギター)による『Madison Cain & Miles Schon』がサポート・アクトとして出演する。カントリー調+ロックという感じの音楽でMadisonは相当な歌唱力の持ち主だ。

最後に演奏された曲は、ひょっとしたら一番最初に演奏した曲を違うアレンジでやっていたような気もしたのだが、個人的にはこの曲が一番印象に残った。

Miles Schonはオヤジさんと似た演奏をする息子でさすがにDNAだな・・と思った。

1925 会場で息子も見守る中、JOURNEYが登場。1曲目はSEPARATE WAYS。メンバーの中で最後に登場したピネダは本当に小柄な人物だった。髪も短くしているので46歳とはとても思えないほどかなり若い。(実際私の友人は20代後半か30代前半だと勘違いしていた)

アジア人としては異例のハイトーンで強いヴォーカルを展開する彼の姿はちょっと見ものだった。

ピネダの加入はファンの間でも賛否両論だったようだ。余りにもスティーブ・ペリーとそっくりな声で音域も声量も殆ど同じなので素晴らしいと評価する人たちと、悪い状態のような物まねバンドだと拒絶する考え方の人たちだ。

今回見ていて私はこの両方の考え方が混在した。バンドにとってヴォーカリストのカラーは大きい。
日本のバンドに置き換えれば、仮にサザンの桑田さんがバンドを辞めて、代わりに桑田さんそっくりの声の別の人物が加入してライブをやったらそれをサザンと云えるのか?というような問題だ。

個人的には、今回のJOURNEYの場合、ピネダの加入は正しい判断だったと思う。ペリーの声が創り出したバンドカラーを、オリジナルのメンバーがモノマネと言われかねないような声質のヴォーカリストを加入さえるというリスクを冒してでも継続・維持することで、機会を経てから別の次元に持って行こうという戦略は大きな危うさもあっただろうが残された中の方法論としては正しい選択だったと思う。

確かにピネダは背も低く、ペリーのようなイケ面じゃないし、まだカリスマ性もない。おまけにアメリカ国内ではアジア人というハンデもあり、これは本人もバンドも自覚している問題だ。しかしそれでもピネダの声はそれを打ち消すほど魅力的だ。世界中捜して結局ピネダだけが1番ペリーに近いヴォーカリストだったわけだから、その希少性は相当なものだと言ってよい。
特にバンドが今後アジア市場を求めて行く場合、ビネダの加入は決してマイナスにならないだろう。

今回会場には比較的若い層のファンが見かけられたが、アメリカGleeというドラマの中で「Dont Stop Believe in」が使われていた事が影響していたようだ。WBCワークドベースボールクラシックでも同じ曲が使用されているが、新しい世代に名曲が受け継がれて行くのは悪い話じゃない。

57
歳になったニール・ショーンのギターは往時を上回る演奏だった。彼はモニターをする際、最近流行りのイヤモニを使用しないのだが、昔からのやり方であるコロガシモニターで演奏する姿は私には良い感じに見えた。
また各曲の演奏冒頭には必ずドラマーの近くに行き、体でリズムを見せながらテンポの調整を行っていたので、ニールが演奏全体をコントロールしていたようだ。ニールがライブ中に使用した楽器は、エレキで3台、その他はアコギ1台と比較的シンプルな楽器構成だった。日本の某有名イケメンな歌手のようにライブ中に10台近く無闇にギターを変えるようなことはしなかった。
ニールのエレキの下面にはティア・ドロップ型のピックが8枚程度貼り付けてあり、ピックを変える際はここに手を伸ばしていた。ソロの際は基本的にオルタネイティブ奏法(各音ごとにピックを動かして弾い奏法)を中心としていた。彼の演奏を見ていると、エレキギターのお手本のような美しさがある。それにリズム感がいいギターリストなので、演奏に切れがあり、演奏パターンの引き出しも多いのでこうした点がこれまで彼が生き残れた原因なのだろうなあと思いながら見ていた。

ANY WAY YOU WANT ITのヒットしていた当時、私もこの曲をコピーをしたので、御本家の演奏を目の当たりにできたのはなかなか有難いものだった。

天才少年として登場した彼もキャリア50年近い人生をギターとJOURNEY一筋で過ごしてきた。浮き沈みも経験したミュージシャンのステージというのは色々な意味で見ごたえがあるものだ。

ところで、他のブログを読むとピネダのヴォーカルに多少厳しい評価を下している人もいたが、初お目見えの私には十分だった。
特にバラードではワイヤードのマイク(テンポの早い曲をやる際に使用するワイヤレス無線マイクではなくて、マイクにコードがついているタイプ)に変えて唄ったのだが、ワイヤードのマイクの方が圧倒的にピネダの中低域が出て彼の元々の太目の声質が反映されていたからだ。ピネダのヴォーカルに多少厳しい評価を下した人は、ワイヤレスを使用した際に失われる中低域に謎の違和感を持ったのだろうと推察する。そういう意味では、ワイヤレス無線マイクで歌うと声質がバンドの音圧に埋もれ気味だった事は確かに私も感じていた。ライブ全編をワイヤードマイクで聞いてみたかったが、パフォーマンスもあるので難しかったのだろう。
フィリピンでホームレス生活をしていた彼が、アメリカのメジャーバンドのメインボーカリストになるというのは、マイク・ウォールバーグ主演の「ロックスター」を彷彿とさせるシンデレラ・ストーリーだが、映画が現実に飛び出してきたようなものだ。彼には永遠にスティーブ・ペリーとの比較論が付きまとう運命だが、それに負けないようにアジアの代表として頑張ってもらいたい。

全体的に武道館の反応は全体的に好意的で良かったと思う。演奏された曲もヒットソングのオンパレードだった点もあるが、入門者にも、あの時代を通過して人にもヘビーユーザーにも悪くないセットリストだったろう。

しかしバンドを見るとお互い歳を取ったもんだ・・というのは最近毎回感じる事だが、段々こうしたバンドを生で見る事が出来る機会もなくなりつつあるのが実感だ。あと10年もしたら我々が通ってきた現役のロックバンドが東京にライブに来ることも殆ど無くなるのだろうと思うと寂しい限りだ。

なお、JOURNEYはドキュメンタリー映画を公開している。東京は新宿だけだったが、非常によく出来たドキュメンタリー映画で、ピネダ加入の経緯や、バンドの浮き沈みの歴史、メンバーのキャリア過程での心理、バックステージの様子などが克明に記録されていた。一部惜しむべきは、Sペリーの脱退経緯については掘り下げられていなかった点だが、本映画は基本的にピネダの発掘物語だからそれも良いかと思って見ていた。
3月20日は休みだったのか満席で、若い人も多かった。当初否定的な評価をされていたビネダの地に足のついたコメントを聞くと、ちょっと今後も応援したくなった。またメンバーもヴォーカリスト探しに苦労したせいか、ピネダに対して非常に気を使っているのが分かった。

http://journey-movie.jp/



武道館の帰りに垣間見えた靖国神社の様子が非常に印象的だった。

130312靖国神社 (2-2).jpg


データ:

場所:日本武道館

チケット代金:9,000円(税込)

座席:アリーナA8-66番(ステージ上手寄り)

SETLIST


-1. SEPARATE WAYS (WORLDS APART)
-2. ANY WAY YOU WANT IT
-3. ASK THE LONELY
-4. WHO'S CRYING NOW
-5. ONLY THE LONELY
--. Neal Schon's GUITAR SOLO
-6. STONE IN LOVE
-7. KEEP ON RUNNIN'
-8. EDGE OF THE BLADE
-9. FAITHFULLY
10. LIGHTS
11. STAY AWHILE
--. Jonathan Cain's KEYBOARD SOLO
12. OPEN ARMS
13. JUST THE SAME WAY
14. ESCAPE
15. DEAD OR ALIVE
--. Neal Schon's Guitar Solo (2台を持ち変えの技あり)
16. WHEEL IN THE SKY
17. DON'T STOP BELIEVIN'

=ENCORE=
18. BE GOOD TO YOURSELF

東京公演 311日 大阪公演 312日 広島公演 314
名古屋公演 3
15日 金沢公演 317


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コメント 2

TETSU

全盛期 83年の来日は 日本武道館です。NHKのヤングミュージックショーでも放映されました。

参加していました。
by TETSU (2013-04-22 21:08) 

コロン

そうでしたか。訂正致します。ありがとうございました。
by コロン (2013-04-26 15:12) 

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