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松任谷由実&プロコル・ハルムツアー ~Back to the beginning [ライブ・コンサート]

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                                           at昭和女子大 人見記念講堂

                                                                                        20121211

 

ユーミンさんの楽曲は時代と共に殆ど聞いているがライブに行ったのは天国のドア/THE GATES OF HEAVEN YUMI MATSUTOYA CONCERT TOUR以来だろう。あれから随分と時間が経ってしまった。

私がユーミンさんをコンスタントに聞くようになったのは1979年の“悲しいほどお天気”からだった。

それまでも“ひこうき雲”“潮風にちぎれて”“翳りゆく部屋”など個別の楽曲で好きなものはあって、多少知っていたがアルバムを買って聞くということはなかった。それは彼女の声質が苦手だったことが理由だ。

大学時代のある日、近所に住む大学の同級生のH君が近所の喫茶店でバイトを始める。そこで同じくバイトをしていた上智大に通う美しい女子大生は、毎日“悲しいほどお天気”を店内でかけていたのだ。H君も居るし美しい女子大生もいるので私は毎晩その喫茶店に遊びに行っていたのだが、知らないうちに“悲しいほどお天気”を全編聞くことになった。そして何気なく歌詞カードを見ながら聞いていると松任谷由実の世界観にズッポリはまってしまった訳だ。特に“緑の街に舞い降りて”や“DESTINY”は秀逸な作品で今でもipodで聞いている。

何故今まで聞いてこなかったのかと自分の不徳を恥じたほどだったが、程なくしてそれ以前のアルバムを全部聞き、遅ればせながら彼女の才能の素晴らしさにのめり込む様になる。

私は山下達郎さんが好きなのだが、売れてない時代の彼はユーミンの楽曲でかなりのコーラスワークをしており、そうした発見も嬉しかった。

彼女の楽曲は彼女が表現者として最もオリジナリティーを持っていたのでそれ以降は声質への苦手意識は全くなくなった。

そういえば昔、私が音楽業界に居た時代、銀座のONKIOハウスというレコーディング・スタジオである夜仕事をしていると、同じビルの別のスタジオで仕事を終えたユーミンさんが帰り際に現れるということが数回あったが、いつも明るくてオシャレな人だった。

今回彼女の音楽的ルーツであるプロコロ・ハルムともコラボライブは、本人の弁を借りれば、“最初は企画に抵抗があった”ということだ。
きっと企画はWOWOWが持ち込んだんでしょうね。
でもそれについては最終的に本人も了解し、判断が未消化だが、現実となった今を一生懸命咀嚼しているというニュアンスでMCを聞いた。

ユーミンファンにとってプロコロ・ハルムへの馴染みが深いとは言えないかもしれない。ほとんどの人はプロコロ・ハルムで知っているのは“青い影”位だろうし私とて同じだ。しかし洋楽ファンには一時代を築いたプロコロ・ハルムの来日は、セット企画と云えども心擽られるものだった。
ユーミンさんのライブと言えば苗場のような小屋を除けば大規模で物凄い演出をショー的に魅せてくれる印象がある。しかし今回はそういった演出を排除したライブだった。私にはある意味でそちらの方がありがたかった。
コンサートは“ひこうき雲”のピアノの弾き語りから厳かに始まった。ライブの冒頭は比較的キャリア初期の曲が多く、私には心に染みるものだった。大学時代の友人との時間や光景が走馬灯のように駆け抜けた。

121211ユーミン人見記念.jpg

会場の昭和女子大学 人見記念講堂
昔、セルジュ・ゲンスブールを見たのもここだった。

プロコロ・ハルムと彼女が“ひこうき雲”と“翳りゆく部屋”を英語版でコラボする演出があった。
ある意味でこの楽曲群の元ネタを作家自身がバラしている訳であるが、“ひこうき雲”→“翳りゆく部屋”→“青い影”と聞いて行くと彼女がプロコロ・ハルムから受けた影響が絶大だったことが非常によく分かる。また受けた影響を非常に作家的に処理して自分のオリジナル楽曲を作り上げた彼女の有り余る才能を堪能することが出来て非常に興味深い演出だった。40年のキャリアはこういう演出に耐えうるということだろう。

しかし芸歴40年は本当に凄い。
彼女がこの長い期間、時代の波を超え、厳しい音楽業界で生き抜けることが出来た素養の根源には、極めて優秀な作家の才能があった点が大きかったのだろうと感じた。特に歌詞の持つ世界観は文学をも超える高度なものなのは今更言うことでもないほどだ。

さて、人見記念講堂は天井がかなり高い講堂で、基本的にはクラシック向きに作られているため残響が多く、リズムが強く出るポップミュージックやロック系には不向きな面があるが、PA(音響)の腕が高かったせいで音の抜けが良く、ヴォーカルや楽器の分離がキチンとしていたのもライブの質を上げてくれていた。また照明も過度でなくツボを押さえた構成で、全体的に聞きやすく見やすい良いライブだった。同じ場所で見た井上陽水さんの時は、会場の残響を考慮せず、彼のヴォーカルに過度なリヴァーブがかかり過ぎていて非常に聴きにくかったが、今回はそういうこともなく助かった。

私は1Fの上手寄りの後ろから3列目付近で見ていたのだが、双眼鏡を持参したのでステージ上の演者の表情や動きがはっきり確認出来た。やはりライブは視覚的な情報量も重要だ。
ユーミンさんの衣装も楽しみの一つだったが、やっぱりセンスのいい人である。イヤモニ(耳にはめているイヤホン型のモニター)にしても色のコーディネートしていたからなあ。あれって特注なんだろうなあ。
彼女は齢57歳になろうとしているが、驚くほど元気ハツラツなのは凄いなあ・・と思いながら見ていた。還暦になってもきっと同じなんだろうと思うと、この年代のミュージシャンって本当にパワフルだなと感心した次第だ。

プロコロ・ハルムのギターのジェフ・ホワイトホーン氏はTシャツだったが、二回目に出てきた時は“Procol Harum”のロゴが入ったTシャツを着ていて気になった。
それにしても齢67歳となるヴォーカルのゲイリー・プレッカー氏の声は当時のままと云えるほど健在で、“青い影”を聞いた時はジーンと泣けてきたなあ。
またハモンド・オルガン奏者のジョシュ・フィリップス氏が、左手で小まめにレズリースピーカーの回転を変えて音色に変化を与え演奏に華を添えていたのが印象的であった。

ユーミンさんもアンコール前のMCで感極まった表情を見せ、こちらもちょっとウルっとした。
ライブ全編を通じて彼女の少女のような初々さ感じられたそんなライブだった。
今更言うことでもないが、ユーミンさんは稀代のエンターテナーである。時代を作る人のエネルギーは凄いものである。

一点だけ惜しむべきは、曲によってはオリジナルキーを下げて演奏されている楽曲が散見されたことだけだろうか。彼女のヴォーカル力は2000年代に入ってから、以前に比べて発声度合いが落ち始め、それをご本人も気にしているという報道も見聞きしていた。
その現実的な対策がやむなくもキーを
下げることだったのだろう。
確かに年齢が上がると高域がキツクなる。
夫の松任谷氏は意図してボイトレを彼女にさせなかったとインタビューで答えていたのを読んだ事があったが、私の見解としてはやはり加齢に伴う喉の筋肉が衰えや変化に対応するためには、一定程度のボイトレによる声の使い方への対策は必要だったろうと思っている。
実は山下達郎さんは数年前、レコーディングで使用しているマイクを変えたと語っている。この理由は不明だが、やはり年齢による声質の変化によって従来のマイクでは以前のような感じを100%補足できなくなったからだろうと推察する。
ポールマッカトニーだって古希になり流石に昔のようには唄えない。これは人間なら仕方のない変化なのだ。
特に裏声は年齢と共に急速に出なくなる。若いころとは違う味を出す意味でも、喉のケアーは重要なファクターだろう。
彼らの年代のヴォーカリストは、納得できる質を維持した状態で、現役でいつまでやれるのかが大きな問題なはずである。いつかは唄えなくなる日が来るが、ファンのためにも出来るだけ現役で出来るレベルを維持して欲しいと願う。

ユーミンさんのキー落としの演奏は事実としてあったのだが、それでも演奏や曲の良さは変わらない。今後も彼女のツアーがあるだろうから、また改めて行こうと思った。

ちなみに長年ユーミンさんのバッキングヴォーカルを務めている松岡奈緒美さんは、1990年代初頭、キングビスケットタイムという企画的な女性グループのメンバーだったが、私もアレンジや楽曲提供をした事があり、一時期六本木のスタジオに籠って一緒に仕事をした時期もあった。残念ながら全く売れなかったが・・。(笑)
彼女は当時と変わりなく元気にステージで活躍しており、客席から見ていて懐かしくも嬉しかった。

以下の当日のメンバーとセットリストを強力なファンが作ったページから引用させて頂く。ファンの力は本当に凄いもんだと思う。

メンバー、セットリスト(曲順)情報: 

http://www7a.biglobe.ne.jp/~yuming-kobe/12tour/procol_harum.setlist.html


そういえば全然関係ない話だが、昔出した彼女のあるアルバムで、クレジットが“松任谷由美”になっていて発売後回収したという事件があったのを思い出した。“松任谷由実”なんだけディレクターの確認ミスで気がつかなかったとい話なのだが、身体極まる事件だったという。まあ文字校正はいつの時代も重い仕事なのだということだろう。


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