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「スマホ・オールインワン時代」の功罪 [独り言]

「スマホ・オールインワン時代」の功罪

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2012年2月23日

 

スマートフォン(以下「スマホ」)の出現は生活スタイルやビジネスを大きく変えた。スマホは電話機能だけでなく、ゲーム、音楽、書籍、インターネットなど我々の周辺に個別に存在していた利用物を1つの機器内に集約し始めている。利用者には非常に便利な状況だ。しかしそれによって周辺に何か起こり始めているのかを検証し、今後の世の中にどんな影響が出そうなのかを冷静に考えてみたい。
まずゲームである。
DeNAGREEを代表とするスマホをプラットフォームにしたゲーム市場が開拓され、売上、利益は年々倍増の勢いだ。ゲームのプログラマー不足から初任給を最大で1000万円払うと言い出したのはDeNAだ。まさにバブルの様相だが、実際にマーケットは拡大している。その影響をモロに受けているのは任天堂などの旧来のゲームメーカーである。ゲーム機器を販売し、それに対応するゲームの発売で囲い込むビジネスモデルは、スマホ・ゲームによって位相転換を始めている。
任天堂は2011年度決算で、3DSの販売価格を下げた影響もあり650億円の営業赤字に転落した。任天堂のIRの業績説明では3DS,Wiiともに全世界的には販売好調と謳っていたが、結果はこの通りだ。プレステで有名なSCEも同様に苦戦している。

ドラゴンクエストなどのキラーゲームを輩出することでゲーム機器を売り、ユーザーを囲い込んだビジネスモデルは過去のものとなっている。現状はまだスマホ系ゲームとメーカー系ゲームは住み分けされているように見えるが、ゲーム市場は数年中にスマホをプラットフォームにする時代になるのは避けようがないだろう。これによって消滅するのは過去のビジネスモデルで生きてきたゲームメーカーである。残念ながら住み分けされる様相は余り感じられない。ゲーム機器製造の周辺で生きてきた人々を含めた仕事は消えている。

ゲーム機器
+ソフト⇒スマホ+配信ゲームという位相転換が起きたのだ。
消失する業務等:機器の設計、デザイン、製造や部品全般、駆体成型、金型、箱に関わるデザイン、紙、スマホゲームのプログラムに対応できないゲームメーカー、一部のゲームデザイナー、印刷、配送、販売店舗。  

音楽はCDパッケージが1997年をピークに年々減少をしており、itune+ipodの出現で留めを刺された感じだ。また音楽をスマホで聞く層が増えており、ラジカセやオーディオ機器の周辺ビジネスが縮小傾向である。かつての大学生の部屋には必ずラジカセが一台はあったが、現代の若年層の部屋にはほとんとない。

CD
ラジカセ+CD⇒スマホ+音楽配信という位相転換が起きたのだ。
消失する業務等:大手の音楽系スタジオ、ジャケットデザイン関連、印刷、CD製版工場、流通、CDショップ。レコードメーカーとミュージシャンの選別が必須になる。 

音楽関連でもう一つ起きている現象は楽器メーカーへの影響だ。昨今PRO TOOLSに代表されるPCベースのレコーディング機器の発達で、大抵の機器はプラグインで事足りている。楽器ですら同様だ。特にシンセ関係はプラグインで再現が可能で、駆体のある楽器とは別の道を歩み始めている。かつて1500万円もしたフェアライトというサンプラーがスマホのアプリとして出る時代なのだ。こうしたトレンドが楽器メーカーにどのような未来をもたらすのかについては近い内に結論が見えるだろう。  書籍も例外ではない。ipadの出現で書籍配信の時代になり、スマホでも書籍などが読むことが出来る時代が到来している。スマホで読む読まないは別にしても、音楽同様にデジタル化への弊害は意外に大きい。書籍ほど人間の関わる作業の集積はない。執筆、デザイン、校正、紙への印刷、配送、書店での販売と書籍にまつわる業務は幅広い。しかし配信によって印刷、配送、書店はその地位を失い始めている。新聞にもこうした波が来ているが、紙の新聞が完全に淘汰されるのはあと十数年後になるだろう。

書籍
+書店⇒スマホ(ipad+書籍配信という位相転換が起きたのだ。
消失する業務等:印刷会社、紙、デザイン関連業務、取次、書店。  スマホには多種多様のアプリが存在する。もはや覚えられない数が輩出されている。

日常生活やエンターテインメントに至るまで分野は様々で使い方もそれぞれだ。しかし共通しているのは、一端使い始めるともはやスマホ
+アプリから逃れられない層が確実に存在していることだ。特に若年層にその傾向が強い。
そのため食料、化粧品、飲食産業、農業、自動車関連などスマホに親和性を持たない分野はともかく、スマホに親和性を持っているのにスマホには集約されないもの、もしくはスマホでこれまでの機能を完全に代替されてしまうものは市場価値を失う可能性を秘めているとも言える。

カーナビですらスマホで対応可能の時代である。デジカメ、辞書も然りだ。このような「スマホ・オールインワンの時代」は産業構造の転換すら起こしてしまう。上記の位相転換がその例だ。しかしそれによって失う物も大きい。雇用、ノウハウ、歴史などだ。利便性の教授によって喪失した事象が社会全体でみた場合、相対的にはゼロサムどころかマイナスを誘引する可能性だってあるのだ。アナログ手法をデジタルに移管することはこうした社会の構造面への影響を考慮する必要がある。

インターネットも同様だ。スマホはプロバイダーを経由せずともネットへのアクセスが可能だ。PCベースではまだプロバイダーを必要とするが、スマホ、ipadPCに置き換わる時代が見えている昨今、プロバイダーを経由せずにネットにアクセスすることでプロバイダー業界は生き残りに必死だ。ビジネスは圧倒的に客側に近い分野を確保するか、圧倒的に川上の分野を確保するかによってその規模や優位性が決まる。
右から左へ物を流しているだけの商社的手法は、ハードルが高い商材以外は競争力を失い易い。プロバイダーはユーザーをネットへ誘う商社的手法で事業を拡大して来たが、既に国内市場は飽和状態だ。また現行のプロバイダーは、スマホの大量データ利用のタダ乗りを受けており、データ量の処理が問題にもなっている。

今後プロバイダーが生き残るためには違う発想が求められるのは必須だ。


アナログ手法からデジタル手法への転換により、産業構造に変革が起こっている。しかしこの変革は必ずしも全てがバラ色に思えない。人間の手を排除して行く産業・社会の構造は、遠からず社会全体にジワジワとした悪影響を及ぼすだろう。こうした構造転換期には社会の在り方に工夫を凝らす必要がある。

それでも手間を掛けなくてはならない仕事は数多くある。こうした業務は人件費コストの問題から海外への移転、機械化などで雇用のそ喪失を招いている。
それならば65歳以上の年金生活者などを活用して、小遣い程度でも社会で働こうとする人材を活用することを考えてみても良くはないか?
年金生活者は最低限度生活基盤は安定しており、若年層のような給与がなくても生きて行ける。時間も十分あり、手間のかかる仕事なら打って付けだろう。(もちろんこなせる業務内容の範囲はある程度限定されるかもしれないが)
働く事で社会貢献、還元も可能だ。若者の仕事を取るのではなく、若者ではコストや工数が係る仕事を高齢者に回せば良いのだはないか。
私は徐々に高齢者に近づいているが、引退後、仕事もなくブラブラする位なら何か仕事をしていた方が良いと考える人間だからこうした考えを持つ。

いずれにしてもスマホに限らずデジタル的なオールインワン化は、便利であるが故の落とし穴がある点を強調しておきたい。

以上。


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